最新のスキル標準であるiCDやITSS+は、「企業」での活用が基本です。これまでもITSS、UISS、ETSSなど旧スキル標準についても、多くの企業が活用してきました。これらスキル標準の策定経緯や活用について、振り返ってみたいと思います。また、DX推進を見据えた活用方法についても深堀していきます。
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iCDの活用対象 |
iCDの活用対象については次の3通りです。 (1)企業・団体・組織での活用 ○組織力強化のための活用 - 組織の持つべき機能・役割の可視化、および組織設計 - 役割分担、最適配置の明確化 - 業務機能の把握と生産性や業務品質の向上を目的とした人材育成策の検討 ○企業・組織戦略実現に向けた効果的な投資の実施 - 優先順位の明確化、投資効果の把握 ○プロジェクト要員の割り当ての効率化 ○企業・組織目標と現状にあった人材育成計画の立案 - IT人材の現状、強化すべきポイントの把握 - 育成計画の検討 - 適切な教育プログラムの選択 ○キャリアパスの明確化 - 目標とするキャリアを実現のためのスキル開発の明確化 - キャリアチェンジを図る際の参照モデルとして利用
(2)個人での活用 ○IT関連スキルの把握 ○自分の持つスキルと成熟度の把握 ○各スキルの活用場面(タスク)の理解、または就業を希望する仕事に必要なスキルの把握 ○目標とするスキル、その習得手段、到達確認の手段(資格、試験など)の明確化
(3)教育機関での活用 ○スキルディクショナリを基にした教育プログラムの企画・提供 ○教育プログラムの評価 |
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iCDの活用手順 |
図はiCDを活用して、企業や組織がIT人材育成のPDCAを実行する仕組みの構築プロセスを示しています。ITSSから受け継がれてきた活用プロセスは基本的に変化しておらず、今までこうした方法で取り組んだ多くの企業・組織の成果を踏まえてまとめられています。
「要件分析」から「試行と確定」までが「導入プロセス」であり、人材開発の仕組みの構築プロセスです。「現状把握」以降は、構築した仕組みを実際に回す運用プロセスになります。 企業や組織は、経営戦略や事業計画を基に、将来を踏まえて求められる活動内容、およびそれに必要な実行能力を明らかにすることが必要です。その上で現状との差異から育成計画や人員計画を立て、PDCAを回すことが理想的なアプローチと言えるでしょう。 |
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iCDにおける「役割」の考え方 |
iCDでは、タスクを全ての中心に置いていますが、使う側として一番身近なのが、タスクを束ねた「役割」です。これをしっかり理解いただくために、今まで経産省・IPAから公表されたスキル標準を基に、経緯を説明したいと思います。
ITSS・ETSSでは「職種」、UISS・CCSFでは「人材像」という言葉を使ってきました。 活用側ではそれぞれを人材に当てはめて使うのをイメージすることが一般的でした。 「職種」は厳密にいうと、人や役割ではなく、技術領域をカテゴライズした言わば分類のようなものです。ITSSの初期の説明文では明記されていましたが、使う側では知らずに、もしくは知った上で人材や役割と読み替えていたのが事実です。そのせいで、会社の仕事の単位や組織の単位と合わないことが問題視されたのもうなずける話です。 一方で、「人材像」も実在の人物をイメージしてしまうことから、複数の仕事を掛け持ちしている人、たとえば設計とPMなどを一つの人材像で表現しようとしたため、色々な組み合わせのものが多数登場してしまう羽目になってしまいました。 そういった、理解の違いをなるべく無くしていかないと、人材育成の仕組みとしては、うまく機能しません。
そこでiCDでは、共通した理解を促すために、今まで使ってきた「職種」や「人材像」という言い方を止め、「役割」に統一しました。本来企業で一番使われるのは役割/ロールであるということからも、大変現場感のある表現だと言えます。
しかしながら、過去の経緯もあり、役割の捉え方については注意が必要です。先述の職種や人材像の時と同様の混乱を招く危険もあります。 しかし、次のポイントをよく理解しておけば問題になることはありません。
・人と役割は通常1:nで考える PMをやりながら設計も担当している、など。 ・役割は育成できる単位とする PMを育成する、という考えになりたてること。 もし、PM+設計の役割設定になっているとすれば、育成のゴールが不明確になる。 ・組織の枠を外してキャリアパスが設計できる単位とする
〜その4につづく 企業活用の考え方について深堀していきます。 |
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登録:2022-03-11 21:17:20
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