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コラム
第81話:スタートした専門学校でのITSS V2本格活用への取り組み!
 以前のコラムの中でも紹介しましたが、いよいよ専門学校でITSSを本格的に活用するための取り組みが開始しました。
教育機関でのITSS活用度
 今までの経済産業省や文部科学省のITSSに関する入札案件を見てみると、ITSSのレベルに合わせたトレーニングの開発と、その実証結果を求めるものがほとんどです。たとえば、アプリケーションスペシャリスト・レベル4向けトレーニングの開発、および受講者の受講前後の知識やスキル保有度の比較評価のレポート、といった具合です。
 これらは、産学が共同で開発されたり実証されたりという内容で、それ自体は有意義なのですが、これだけでは教育機関でITSSを活用していると言うには、物足りなく思います。
 また、大学関係でもITSSというキーワードは出てきますが、本格的に活用しようという声はいまだに聞こえてきません。ITSSユーザー協会の立ち上げ当時は、何校かの有名大学の教授が個人会員になって、自らの意思を表明されていましたが、大学そのものでの話しになると急にトーンダウンしてしまう状況でした。
文部科学省公募案件「専修学校教育重点支援プラン」
クリックすると拡大  昨年から話し合っていた内容が、ついに文部科学省の公募案件「専修学校教育重点支援プラン」で採択され、新潟コンピュータ専門学校主体に立ち上がることになりました。以下事業プランの抜粋です。

・事業名
 ITSSの専門学校カリキュラムへの適応に関する研究開発
・事業の概要
 当事業は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が提唱しているITSSを専門学校カリキュラムに適用し、高度専門士を含めた情報系学生のスキルマップを研究開発する。 専門学校カリキュラムは、同じ情報系でも種類・レベルが各校まちまちであり、試験・検定も多くの種類が乱立している状態である。この状態は、学生にとっては将来的キャリアパスを見通せない原因となり、企業にとっては採用時に学生スキルレベルを評価しづらい原因となっている。また一方で、昨年度、専門学校に高度専門士が制定された。今後、高度専門士が社会的認知を得るためには、専門士との違いを明確にし、専門士レベル以上のキャリアパスを描く事が重要である。 上記の課題を解決するため、ITSSの骨組みに合わせ専門学校カリキュラムを再構築することで、情報系専門学校にとって標準的な学生スキルマップを構築する。専門学校、学生、企業が同じ人材育成に関するスキルマップを持つ事は、本来的にITSSが仕事をこなす上での能力評価であり、その意味で大学とは違う立場として実学志向の専門学校の信頼度を上げることに繋がる。
・事業の目的
 高度専門士を含めた情報系学生のスキルマップを作成することで、下記2点の目的を達成すること目指す。 
【目的1】学生にとって高度専門士を含めたキャリアパスの指針とする。 
【目的2】学校と企業における人材評価のミスマッチを解消する。
 仕事を遂行するためには、図1下記の各要素がある。今回の事業でITSSを適用する範囲は、知識・能力の熟達度(レベル)に的を絞って研究開発する。専門学校は、知識伝達・能力アップを中心にカリキュラムを作成しており、この部分で、高度専門士を含めた学生スキルマップを作成する。
・当プランの必要性
 昨今、コンピュータ業界の職種は多種多様に渡っており、一昔前のプログラマ、システムエンジニアだけでは括りきれない分野が生まれている。また、求められる熟達度も仕事での立場によって様々である。このように水平垂直方向に細分化されつつあるエンジニアに対し、専門学校のカリキュラムがどう対応するのかを明確にし、学ぶ種類・順番を明示することで、学生が将来的キャリアパスを思い描けるようにする。また、情報系の高度専門士として必要なスキルを明確にし、2年課程、3年課程の専門士との違いを明らかにする。 専門学校向け学生スキルマップは、ITSSにリンクして作成され、企業採用時には、あくまでITSSに変換して評価が行われる。これにより、企業と学校は同じ評価尺度を持つ事になり、人材評価のミスマッチを解消することとなる。ITSSは、急速にIT系企業で導入が進んでおり、従来の基本情報試験等の国家試験とともにIT人材評価尺度として、今後ますます期待されている。専門学校としてもこの流れに対し、早めに準備を進める必要がある。
ITSSは、企業と専門学校のインタフェースになりうるか
 当プロジェクトには、以下の学校法人、団体、企業が参加しています。

(学)新潟総合学院 新潟コンピュータ専門学校
(学)国際総合学院 国際情報工科専門学校
(学)日本コンピュータ学園 東北電子専門学校
(学)清風明育社 清風情報工科学院
(学)コンピュータ総合学園 神戸電子専門学校
(学)麻生塾 麻生情報ビジネス専門学校
NPO法人 CBTコンソーシアム
(株)エヌ・ティ・エス
日本アイ・ビー・エム(株)
(株)スキルスタンダード研究所
(株)エスアイエス

 企業からの意見も取り入れ、参加している専門学校でうまく成果物をシェアしていくという方針で進められます。筆者もアドバイザーとして参画しており、専門学校でITSSをいかに活用するかに知恵を出しています。
仕組みと仕掛け
クリックすると拡大  先の図を見てお分かりのように、専門学校ではトレーニングでの実地訓練はできても、仕事での成果を出すことはできません。したがって、専門学校ではスキル熟達度に焦点を絞った活用を前提とします。また、スキル熟達度レベルと言えど、「レベル7」を目指すのは不可能で、難易度は高いですが「レベル3」をゴールとし、それ以下を10段階にしたレベル観を用いる予定です。さらに職種もITスペシャリストやアプリケーションスペシャリストのような専門学校でターゲットにできるものに絞ります。
 これらの仕組みを現実のものとする仕掛けには、ITSSユーザー協会のスキル管理システム「SSI-ITSS」を利用することになっています。協会認定ASP事業者である株式会社エスアイエスがツールを提供します。(*SSI-ITSSについては、コラム63話参照)
 SSI-ITSSはITSSキャリアフレームワーク以外に、独自キャリアフレームワークを作成する機能を持っています。今回の専門学校用キャリアフレームワークは、その機能を用いて作成されることになります。したがって、学生のスキルデータをITSSキャリアフレームワークと、専門学校専用キャリアフレームワークの両方で見ることができるようになります。
教育機関によるITSS活用のゆくえ
 企業で活躍できる人材を育成するのは、教育機関の大きな使命のひとつです。特に専門学校では、即戦力となる人材の育成が求められます。企業でITSSが普及して行くのは間違いない事実なので、今回の専門学校での本格的ITSS活用の取り組みは、産学のインターフェースを取る上でも、大変大きな第一歩になると確信しています。日本でも初の試みとなり、今回参加された専門学校をベースに、全国に広げていく必要があります。参加校の責任は重いですが、少子化や人材不足が叫ばれる昨今、大きな期待が寄せられるスタートとなるでしょう。
今後も随時進捗をお伝えしていきます。
▲▽ 関連サイト ▲▽
専修学校教育重点支援プラン
スキル管理システム「SSI-ITSS」について
登録:2011-01-30 15:49:22
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