スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第80話:名古屋での「ITSS V2」導入フェーズ1終了!本格地域展開の兆し
 お伝えしていた名古屋での全6回ITSS V2導入集合コンサルティングが、9月28日に無事終了しました。地域展開のショウケースとなることは間違いありません。
名古屋でのITSS導入実践研究会
クリックすると拡大  79話では要求モデリングまで話しましたが、今回はそれ以降の内容についてお伝えします。研究会という名がついていますが、単なる勉強会やトレーニングではなく、実質集合コンサルティングの形を取っています。ですから、出席者の皆さんには多くの作業を強いることになります。セッションの中では作業をせずにレクチャーや議論のみとし、次回までに持ち帰って議論・作業してくるという流れです。しかも次回のセッションの先頭で各社に作業内容や成果物をプレゼンしていただく形式を取りました。
 今回の取組みをまとめていただいたのは、愛知県情産協(AIA)、及び名古屋ソフトウェアセンター(NSC)で、参加されたのは名古屋の地場企業として活躍されている以下の5社です。

キムラユニティー
  http://www.kimura-unity.co.jp/
サンテック
  http://www.suntec.co.jp/
シイエム・シイ
  http://www.cmc.co.jp/
システムハウス
  http://www.system-house.co.jp/
システムリサーチ
  http://www.sr-net.co.jp/

各社の参加者は、経営層から経営企画の責任者ということで、自社の人材育成について並々ならぬ意欲を持たれている方々です。

To-Beファンクションモデルの策定
クリックすると拡大  To-Beファンクションモデルは、こちらからテンプレートを提示した上で考え方を説明し、各社で内容を議論いただく手順を取りました。
 ファンクションモデリングの手順については、コラムの中で詳しく説明していますので、ご覧ください。ここでは先の要求モデルを受けて、いかにビジネスモデルや経営方針、さらに将来計画を盛り込んだものにできるかがキーポイントです。
 さらに組織や属人性とは関係なく、ここで定義できた機能に対するスキルを、機能のサブセットとして定義していきます。これも、テンプレートを提供しますが、スキル定義自体はITSSユーザー協会のスキル定義委員会で策定された「ITSS V2スキル定義」を使います。
 また、UISSではこの機能とサブセットのスキルを提供していますので、大変考えやすくなっています。

(図は参考例で、今回の内容と異なります。)
自社「目標人材モデル」の策定
クリックすると拡大  各社の「目標人材モデル」を表現するのは、キャリアフレームワークです。各社の考えが最も目に見えて表現される部分でもあります。できるだけ人事制度を意識し、等級をレベル観に生かした会社、逆に意識せずに技術職のみにフォーカスした会社、また仕事に必要な要素技術を意識した会社、組込み系のエンジニアが多くETSSからかなりの部分を取り込んだ会社と様々です。 
 先にお伝えしたように、これまでの要求モデルやファンクションモデルを使って経営層の方々とディスカッションができたということで、経営層やエンジニアに説明責任が十分果たせたということが、そのままうまく反映できた内容になっています。
 次にキャリアフレームワークで定義した職種に対し、先に作成した機能を割付け、役割範囲の定義をしていきます。これで職種の役割が明確になるのです。
 機能は組織とは異なりますが、この機能を束ねて組織体制の検討も可能になります。さらにユーザ企業の場合は、自社とITサービス企業との役割分担も明確に定義できます。

(図は参考例で、今回の内容と異なります。)
スキルセットの構築〜機能・職種・スキルのマッピング
クリックすると拡大  これまでの成果物をうまく参照・組合せをして、職種ごとのスキルセットを確定して行きます。職種と機能のマッピングが済んでいますので、機能のサブセットとなるスキルの集合体により、職種ごとのスキルセットとして自動的に出来上がることになり、具体的に議論できるベースを用意できます。
 この進め方をすると、職種ごとのスキルの過不足が明確になります。ITSSユーザー協会のスキル定義は、要素技術や業界・業務スキル、さらに資格などにブレークダウンしたものも提供されていますので、スキルを作り出す作業は最小限に抑えられ、選択に幅ができます。
 次に職種に割り当てられたスキルを使ってレベル観をつけていきます。
 これらの作業は、ITSSユーザー協会のスキル管理ツール「SSI-ITSS」を利用すると、スキルレベルのマッピング機能を使ってシミュレーションでき、効率的にレベルをつけることが可能です。
 このようにそれぞれをステップバイステップで明らかにしていくことで、経営者や現場エンジニアの方々に説明して理解を得ることができるようになるのです。社内展開する上で大変重要なポイントです。

(図は参考例で、今回の内容と異なります。) 
今後の展開〜地域や中小企業ではITSSは使えないと決め付けている方々に喝!
 足掛け3ヶ月実質2ヶ月、3時間のセッションが6回という短い期間の中で、成果物のレビューや作成作業に、多くの時間を費やした参加者の皆さん、またチャンスをいただいた主催者の方々に感謝しています。
 今回の作業では、満足なコンピテンシーまで設定することができず、まだまだ未完成の部分もありますが、皆さん一様に満足された様子でした。引き続き、進められることを誓って最終セッションを終えた次第です。
 この内容は、12月13日に名古屋地区での報告会が予定されており、さらなる普及が見込めます。また、AIAやNSCも次の展開をお考えで、ついに地域展開が大きく前進したという実感がしています。

 地域や中小企業ではITSSは使いづらい、また弊社が展開しているトップダウンでの導入手順は地域や中小企業では無理だ、と断言される方がいます。たしかに理論と現場で直面することには大きな相違があります。しかし、理論を知らないと現場での効率的・効果的な進め方はできません。システム開発の手法を否定する人がいるでしょうか?また、だからと言って手法どおりに実際の開発を進めることが出来るでしょうか?
 現場でずっと経験してきた方はお分かりだと思います。手法や手順をしっかり理解しておくことはMUSTです。その知識や経験を使ってその場で一番良い方法を選択していくのです。ということは、進める方はそれができる能力を持った人であることが求められます。
 そのように思い込んでいる方々は、大企業は人材育成のために体制もカネも時間も用意できるが、地域や中小はできないということを理由にしているようです。それは地域や中小企業の皆さんに失礼です。実際に何社もの中小規模の企業にも導入できていますし、今回の名古屋は1社は1000名超ですが、他の4社は数十名から300名というサイズです。そのように決め付けることがITSSの普及を妨げ、今まで日本のITエリアの発展を妨げてきていると思います。
 大企業は地域や中小の企業と比べ、体制もカネも時間も用意できるのは事実でしょう。しかし、その替りに制限も多いということを忘れてはいけません。過去から独自で色々な仕組みや制度を持っており、それを変えていくことはよほどのことが無い限り難しいと言えます。筆者の知る限り、大企業で全面的にITSSを導入し切れているところはありません。しかしながら、ITSSを有効に活用しているとは言えませんが、大きな企業では、あまり思想が固まっていなくとも体制で押し切っていくことも出来ます。
 逆に地域や中小企業こそ、自社戦略を明確にし強みを伸ばしアピールしていく必要性があります。大手の言いなりになったり戦略が無い企業は、アジア勢に淘汰されて行き場を失ってしまいます。それが自分とは関係ないと思うのは大間違いです。頭を使って将来像を描いていく必要に迫られているのです。
 そのようなことは地域や中小企業にはできないと言われるのは、腹立たしいことだと思いませんか? また、地域や中小企業でITSSが本来の考えで普及できないと、「日本のITSS」とは言えません。
登録:2011-01-30 15:49:00
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