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コラム
第77話:UISS/ITSS V2の導入手順〜その5 ファンクション/スキル変換
 以前から少しずつお話している著書出版ですが、刊行が9月20日、発売が21日に決定しました。タイトルは「ITエンジニアのためのITSS V2がわかる本」で翔泳社から出版されます。Amazon.comでも21日から発売され、特典付きキャンペーンも予定されています。是非楽しみにしてください。今回は「UISS、ITSS V2の導入手順」4回目、ファンクション〜スキル変換をお話します。
「目標人材モデル」とは何か
クリックすると拡大  幾度と無く繰り返しお伝えしていますが、UISSやITSSのキャリアフレームワークは、共通化されたものであり、企業目標を元にした人材育成にそのままの形で使用しても効果が見込めません。理由は以下の通りです。

・両キャリアフレームワークとも、企業自体のビジネスモデルを反映したものではない。特にUISSの場合は対象業界も多岐に渡るので、一律に揃えること自体が意味をなさない。
 企業の目標達成に貢献する人材の育成は、共通指標を使用した人材調達とは視点が異なる。
・企業の目標達成に貢献する人材の育成におけるレベル観は、必ずしも共通指標のレベル観に合わす必要は無い。ただし、人材調達の場合は合わすことが必須。

 そうすると、目標人材モデルを策定するために、企業の目標をいかに形作っていく か、ということが重要になります。その4までで説明してきた「人材に関する要求分析」、そこから生み出された「要求モデル」、さらにそれを踏まえて「機能分析」から作成されたTo-Beファンクションモデル、及びその作成プロセスの重要さがお分かりだと思います。
スキル構造
クリックすると拡大  「目標人材モデル」を表現するスキルについて話を進めます。
まず知識とスキルの違いは次の通りです。

・知識
 仕事でパフォーマンスを発揮するための前提
・スキル
 知識を使って仕事などでパフォーマンスを発揮する能力
 ただし、応用力が利く能力(利かない能力はテクニック)

さらにスキルは、一般的に次のスキル構造に分類されます。

・専門能力(テクニカルスキル)
 仕事をする上で前提として持っていないといけないスキル
・人間理解能力(ヒューマンスキル)
 仕事で成果を出すための実行力
・概念化能力(コンセプチュアルスキル)
 他者のレベルに合わせて物事を概念化・抽象化するスキル

 IT系の場合、ITスキルが専門能力に当たるでしょう。また概念化能力を分かりやすく説明すると、例えば仕事を部下に指示する場合と、家に帰って何も知らない家族にその内容を話すのとでは全く異なり、分かりやすい内容にしたり、例え話など用意することになります。このように相手が分かるように概念化する能力をコンセプチュアルスキルと言います。
 ITスキルやコンセプチュアルスキルは、あくまで仕事をするための前提スキルですが、ヒューマンスキルは、それらを使って実行し成果を出すためのスキルと位置づけることができます。
 この有名なカッツ教授の関係図は、企業での役割と3つのスキルの関係を示したものです。これを見ても実行力であるヒューマンスキルは大変重要で、役割に関係なく同じ割合で存在することが分かります。それに対し、経営層に近づくにつれ専門能力の割合は減り、逆にコンセプチュアルスキルの割合は増えて行きます。
 一般的にはヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルを合わせてコンピテンシーと呼ばれます。
ITスキルとコンピテンシー
クリックすると拡大  次の図のように、企業で必要な人材像である「目標人材モデル」は、専門能力のITスキル、概念化能力・人間理解能力のコンピテンシーで構成されます。この中でITスキルやその前提となる知識は、かなりのものが共通化されており、ITSS V2として提供されています。UISSは、網羅されたファンクション群のサブセットとして共通化された知識とITスキルなどが提供されているわけです。
 しかし、コンピテンシーについてUISSでは、企業色に深く依存するもので企業独自での追加を前提とし、対象外とすると定義されています。また、ITSS V2では図を使って対象外ということが明示されています。
 UISS、ITSS V2ともに参照モデルであるために、共通化できるスキルのみを定義してあるということです。そうすればコンピテンシーは、「目標人材モデル」を策定する側の責任で追加していく必要があります。共通化されたスキルだけを使って自社の「目標人材モデル」を策定するのは不可能です。多くのITサービス企業が目標人材と人材調達を取り違えている、または別視点であることを認識できていないのは、この部分の理解不足が原因でしょう。自社の「目標人材モデル」を策定するには、ビジネスモデル、経営目標などが基本ですし、スキルとして追加しなくてはならないものに、コンピテンシー、業界スキル、業務スキルなどがあります。
 ITSSは最終形を提供しているという思い込みがありますが、V2で表現されている参照モデルというワードを考えれば、理解することはできるはずです。また、UISSでは人材モデルを策定できる材料と、策定手順を提供することになりますから、扱い方が非常に明確になったと言えるでしょう。
専門能力/ITスキルセットの構築
クリックすると拡大  次の図のように、先に策定されているTo-Beファンクションから、そのファンクションを遂行するのに必要なスキルを、ITSSで共通化されスキル領域として定義されているスキル群から選択して行きます。スキルを作り出していくのは大変ですが、既存のものを分類を元に選択していくのは、それほど難しいことではありません。
 UISSでは、ファンクションごとにサブセットとしてスキル群が定義されていますので、To-Beファンクションモデルを策定した時点で、選択せずともベースとなるスキルセットは出来上がっていることになります。
 このように必要なスキルセットを構築するプロセスの中で、スキルの過不足が明確になってきます。UISSやITSS V2には、共通化が可能なスキルのみの定義になっていますから、当然不足分のスキル追加が必要になりますし、網羅的にスキル定義がされているために、不要な物も存在します。
 追加スキルの代表格は、コンピテンシー、業界スキル、業務スキル、要素技術などです。
弊社導入手法の考え方
 最近あちこちのサイトの情報やセミナー内容を見ると、色々な方が弊社の導入手法を勉強し参考にされているのがよく分かります。若干理解不足、経験不足が気になりますが、3年以上前から訴え続けてきた考え方が、ようやく浸透し出したと喜ばしく思っています。弊社サイトのアクセス件数も大幅に増え続けています。情報不足の中、皆さんの期待に応えようと頑張っています。遠回りされた方であればあるほど、これが必要だったと実感してもらえる内容だと自負しています。


  次回は、ファンクション/スキル変換の続編、及び人材モデル策定を予定しています。
▲▽ 関連サイト ▲▽
9月20日出版「ITSS V2の分かる本」
登録:2011-01-30 15:47:40
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