スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第6話:「ITスキル標準」導入を検討する企業の状況
「ITスキル標準」というキーワードに異様なくらい企業が反応し始めました。しかしながら本来の目的を置き去りにして、勝手な理解や企業の都合に合わせておかしな導入が蔓延しています。このままでは「ITスキル標準」は使えないという評価になりかねない状況です。
「ITスキル標準」と企業の状況
 日本特有の現象かもしれませんが、「ITスキル標準」に対する理解度が上がらないまま企業で導入を進めており、一度進むと容易には引き返せない道に踏み込んでしまうケースも出始めています。技術者個人は、人づてにそのような状況を耳にして「ITスキル標準」を否定的に受け取っている現実があります。一方では、企業や教育ビジネスに携わる方面から認定制度の実現に向けて声が上がっています。理解度はさておき、地方自治体がIT関係の調達条件に「ITスキル標準」を使い出したのも、その一因であると考えられます。このように全てが企業主体の動き方ですが、その企業自身がまともに理解できずに、人事制度化などを先行させたり、経営戦略ではなく安易にやってみるという形で診断ツールから入ったりで、上手く行っているとは言いがたい状況です。
「ITスキル標準」を導入することにより、企業としての競争力、技術力にかかわる強み弱みがスキルベースで認識でき、さらに経営資源としての人材の戦略的活用を進めることが可能です。「ITスキル標準」は、企業が自社の強み弱みを把握し、経営戦略の見直しを進める、あるいは技術者個人が自らの市場価値を把握できる点で有益ですが、「ITスキル標準」をそのまま自社の人事制度に導入するという施策は意味をなさないと言えます。人事制度は企業の経営戦略上必要な制度であり、ビジネス貢献および市場価値と連動した処遇制度にすることにより、企業と技術者の活力を高めていくものです。
それを標準化することなどありえないはずですし、議論せずに「ITスキル標準」を導入してみようという考えが成り立たないことは明白です。
人材戦略推進のための「ITスキル標準」導入に対して重要なことは、以下の通りです。
@ビジネスモデル・経営戦略からスキルベースの目標人材・人材評価モデルを策定する。
A上記を含んだ企業内人材育成の仕組み・体制を構築する。
B経営環境の変化に伴う評価・改善のPDCAサイクルを確立する。
それらを前提にして、背景に示した問題を解決するためには、「ITスキル標準」を正しく理解して企業に導入すること、また企業間などのスムーズな調達と個人のモチベーションアップのために、「ITスキル標準」を利用することが現実的であり、それを基準として各々が人材育成を計画・実践することにより、効率的・効果的にプロフェッショナルの育成が推進されるものと考えます。


技術者がモチベーションを下げる導入失敗例
最近雑誌や新聞で「ITスキル標準」の導入失敗事例が相次いで取り上げられています。
なぜこのようなことになるのか、にわかに信じがたい内容ですが、技術者の未来のため、企業の反映のためしっかり受け止めたいと思います。

中堅SIベンダー・A社は、2004年初めに経営判断で「ITスキル標準」を社内導入することを決定。人事担当者をアサインして取組み開始。担当者が独自に調査した後、2004年後半にほぼそのままの形で「ITスキル標準」を人事制度に導入。
そのまま取入れたことで、会社のビジネス上必要の無いスキルまで評価対象となり、技術者の評価が以前より下がる結果となった。役職にまで連動させたので、降格・減給になった技術者も出た。
・技術者の意見
「長年かかって仕事をこなし会社に貢献して来た結果、役職も上がり給与も上がってきた。それがある日突然、「ITスキル標準」を導入され、仕事の範囲とは余りにかけ離れた職種を割り当てられ、必要の無いと思われるようなことまで評価され、レベル2だと判定されて降格してしまった。ばかばかしくて続ける気がしない。辞めたい。」
・「事前にITスキル標準の位置づけや係わり、評価との繋がりなどの説明を求めたが、納得できるような答えは無かった。単に国が決めたからの一点張りであった。」
登録:2011-01-30 15:30:43
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