ITSS V2のリリースで、「SSI-ITSS」の価値が再認識されつつあります。「SSI-ITSS」は、ITSSユーザー協会が提供するスキル管理システムで、複数のASP業者からサービスされています。何故、再認識されつつあるか?その理由を説明します。
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ASPとは |
ASP(Application Service Provider)は日本でもかなり使われており、一般的になっています。従ってサービス形態をお分かりの方が殆どでしょうが、あらためてその内容、メリットやデメリットを並べてみます。
<サービス形態> ・業務システムなどを自社開発せずに、ASP業者の提供するシステムをインターネットなど、オンライン環境で使用する。 ・契約形態は、ユーザー数、固定料金、などケースバイケースで交わされる。 <メリット> ・システム開発のためのコストがかからない。 ・制度変更などでのシステム変更コストがかからない。 ・自社でサーバなどの環境を持つ必要が無い。 ・システム運用のための人件費などのコストが必要ない。 ・データセンターなどで運用されるため、最新のセキュリティ管理がされており安全。 <デメリット> ・複数企業で同じシステムを共有するため、企業独自のものを反映しにくい。 ・自社データが外部で保持されることになり、企業ポリシーと合わない場合がある。 ・データの取出しなどに制約がかかる場合がある。
最近はERPや業務パッケージを提供している企業が、ASP事業に乗り出してくるのも珍しくありません。システム開発に莫大な費用をかけて、さらに運用のためのハード・ソフトの維持管理・グレードアップのためのコスト、システム自体の運用のための人件費、さらに制度変更などでのシステム変更のためのコストと、自社独自のシステムを持つことに費用がかかりすぎ、問題視されることが多くなってきました。また、競合他社との争いもますます激しくなり、さらに便利なサービスを次々と展開しなければならなくなったり、社内業務のスピードアップが要求されたりで、システムライフサイクルが短くなってきています。その上技術の進歩もすさまじく、常に見直しを続ける必要性が増してきました。 そのような状況の中で、ASPが注目されてきたのも当然だと言えます。共通で使えるシステムなら使った分だけ費用を払うASP方が、コストの面では圧倒的に有利だからです。 |
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オンデマンド・アプリケーションの登場 |
ところが、最近ASPでは使いにくい、またそれが原因で競争力が削がれる、といった意見がASPユーザから出てきました。競合企業との熾烈な争いゆえに発生してきたものです。 理由はデメリットにもあったように、基本的にASPでは同じソフトウェアを複数の企業で使用するので、独自性が出せないわけです。簡単な例で説明すると、あるシステムで使われているデータ項目名に「顧客」があったとします。事務用品を売っている企業なら「顧客」で問題ありませんが、このシステムを病院で使った場合、「顧客」ではなく「患者」にする方がぴったり来ます。(日経コンピュータSaaS特集より) ASPは同じソフトウェアを、それぞれ企業に別インスタンスで提供しているだけです。各企業からすると自分たち専用に思えますが、同じソフトウェアを使っていることになります。ですから、各企業ごとにあった形に変えることはできないのが普通です。 ところが、提供形態はASPなのですが、この制限を打ち破って大きく売り上げを伸ばしているUS企業があります。セールスフォースドットコムです。ASPで提供していながら、そのソフトウェアは、各企業ごとにあった形に変える(カスタマイズする)機能を持ちます。ですから、先ほど書いたような「顧客」と「患者」のような事業形態上しっくり来ないものを共有する必要は無くなったのです。 |
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スキル管理システム「SSI-ITSS」はオンデマンドアプリケーション |
第17話に「SSI-ITSS」の成り立ちについて詳しく説明していますので、是非読んでください。要点だけ話しますと、私が長年現場で苦労してきた人材育成についての経験の積み重ねと、ITSSという切り札によって結実したソリューションが「SSI-ITSS」です。 2002年には既に私の頭の中にその構想が固まっていました。それまでは、各企業が個別にスキル管理の仕組みやスキル定義自体を開発し、コストをかけて維持管理していた状態でしたが、ITSSが開放してくれるはずだと確信していました。 スキル管理システム「SSI-ITSS」は、そのコンセプトからオンデマンド・アプリケーションと呼べる内容になっています。
・ITSSに沿ったスキル定義を持つ。 ・ITSSにはない業界、業務、要素技術、個別技術などのスキル定義を持つ。 ・上記2種類のスキル定義は、ITSSユーザー協会がメンテナンスして行く。 ・ユーザのビジネス形態から、必要なスキルを上記2種類の定義から選択する機能を持つ。 ・ユーザのビジネス形態から、上記2種類の定義に不足しているものを追加する機能を持つ。 ・人材育成の継続性を考慮し、スキル定義項目に対して個々のスキルデータを蓄積していく、インベントリ型のシステムとする。 ・ITSSのキャリアフレームワークにスキルデータをマッピングして可視化する機能を持つ。 ・企業独自のキャリアフレームワークを複数個作成する機能を持つ。 ・独自キャリアフレームワークに、スキル条件を設定する機能を持つ。 ・独自キャリアフレームワークに、スキルデータをマッピングして可視化する機能を持つ。
ここでのキーポイントは、上記の「機能を持つ」ということです。 ユーザごとにビジネスモデルも、ゴールも異なるわけですから、ITSSを活用する場合は、ユーザごとの環境を作れないと、意味が無くなるということになります。 このそれぞれ異なる環境を持てる機能をサポートしていることこそが、オンデマンド・アプリケーションと言える理由です。 |
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人材投資のためにITSS V2を100%活かせる「SSI-ITSS」 |
ITSS V2は、「参照モデル」であると明言されています。企業で実際に使うには、必要なものを追加していく必要があるということも、明確に書かれています。まだ、自分自身で理解不足だと思われる方は、ITSS V2概要編をしっかり読んでください。また、最近のコラム60話・61話にもその辺りのことを詳しく書いています。是非読んでみてください。 「SSI-ITSS」はそればかりでなく、継続した人材育成の仕組みづくりに一役買うことができます。ツールなのであくまで手段ですが、うまく利用することによって低コストで、継続した人材育成のためのスキル管理の運用ができます。 しかし、「SSI-ITSS」は便利な道具であっても、使うだけでは何も生み出してはくれませんし、解決もしてくれません。何のためにどうするかを事前にしっかり議論する必要があります。経営戦略やIT戦略から落として行くことや、ビジネス目標を達成するためにはどのようなスキルが必要なのか、また現在何が不足しているのか、そして企業としてのキャリアフレームワークをいかに策定し、どのような運用プロセス・評価プロセスを構築するかは、実績ある手法・手順で進めていくことが重要です。ITSS導入のプロからコンサルティングを受けることも、返ってコストダウンにつながります。先行事例をよく勉強したり、場合によっては、見学も含めて説明を受けるために導入済み企業に訪問したりなど、自ら積極的に動き、なるべく遠回りせずに進めることが重要です。 |
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登録:2011-01-30 15:49:11
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