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コラム
第53話:ITSSとヒューマンスキル 〜解かなければならない関係とバランス
 言い尽くされていますが、ITSSは標準化された辞書です。どのように使うかはそれぞれの考え方によりますが、導入のための手順はその構造から、また人材像(目標人材モデル)を作るという意味からも、ある程度限定されてきます。そしてその目標人材モデルは、スキルで人を表したものなので、必ずヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルなどITSSには定義されていないものも必要になってきます。
ITSS導入コンサルティングでの新たな認識
 ITSSに関わって3年程が経ちますが、この1年はITSS導入コンサルティングのビジネスを主体にして、ITSSユーザー協会はボランティアで進め、以外に国がらみの委託事業・委員会活動などをこなしてきました。
 ITSS導入コンサルティングを提供したのは、ファイザー社、リクルート社、サイバード社、CTC社、テンプスタッフテクノロジー社、オムロンソフトウェア社の6社です。今後もコンサルティングを継続する企業もありますし、日本コンピュータコンサルタント社など数社が新たにスタートします。これらの企業へのITSS導入は、単にITSSフレームワークのみを使用してスキル診断するというような次のステップが無いものではなく、To-Beを捉えた本格的なもので、様々な局面で導入事例として取り上げられています。
 これらITSS導入コンサルティングを進めて行く中で、必ず課題として出て来るのがヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルです。ITSSは辞書ですが、企業で必要なのは「人材像(目標人材モデル)」です。
 この「目標人材モデル」にはITスキルも必要ですし、ヒューマンスキル系も必要になってきます。ITSSにはヒューマンスキル系は殆ど定義されていませんので、人材像として定義して行くには、これらを追加して行くことになります。
企業の「目標人材モデル」にとって重要な構成要素「ヒューマンスキル」
 ITSSはもともと標準化された辞書、言い換えれば共通的に使えるIT系スキルをまとめたものです。経済産業省で定義されたレベルの相場観で言うと、「レベル7」は島津製作所の田中氏であり、日本に何人もいない存在です。そのような特別な方を表現できるスキル群も定義されているものであり、なぜならITSSは辞書だからです。ですからその辞書をそのまま企業に取り込んでもスーパーマン定義によりエンジニアを評価することになり、現実感が殆どありません。
 職種専門分野を表すITSSフレームワークについても、あくまで標準としての役割を表現しているだけであり、それぞれビジネス形態の異なる企業に、そのままの形で取り込んでも「ビジネス目標達成のために貢献する人材」を表現できません。あくまで企業間の調達や個人がITエリアでどのような価値があるか、という認識で使うものです。各企業の人材育成で必要なフレームワークは、ビジネスモデルに合った職種なり専門分野を持った独自のものということになります。目的ごとに活用方法が異なることを認識する必要があります。
 最近、ITSSスキルフレームワークで企業価値を知るための企業間比較をできると信じて実施していた企業が、「果たしてビジネスモデルの異なる企業を同じ枠にはめて比較すること自体に意味があるのか?」と思い始めています。比較はあくまで手段であり目的ではないことに気がついたとも言えます。あるべき姿、ゴールを設定しないと現状をいくら分析しても、次のステップが無いということに、もう気づくときだと思います。
 また、ITスキルの定義そのものは、誰が見ても同じ理解ができるようになっていないと意味がありません。それに対して「目標人材モデル」のもうひとつの構成要素であるヒューマンスキルは、企業の特色を表現できるものであり、経営者のDNAを後進に伝えて行くためのものでもあります。企業独自の単語が入っている場合が多いのもそのためだと言えるでしょう。
人材に課する要件について
 著名な心理学者、及び人材開発に関わる方々の見解によると、人材に関する要件は以下の3層に分かれるということです。
・第1層
 自分が相手にこれだけのことをすれば、必ず相手もこれだけのことを返してくれると信じる感情(心理学ではベーシックトラストと呼ばれる)
 就職するまでに固まり幼児期の体験で決まる、元来変えられないもの。
・第2層
 思考特性や行動特性を表し、<好奇心→チャレンジ→認知>のサイクルのことである。このサイクルがうまくいかないことが続くと、チャレンジを避けるようになる。
 30〜35のビジネスマンの最初の10年で固まり、以後変えにくい。
・第3層
 経験や知識で蓄積されて行く特定分野の具体的能力、知識やノウハウなど。

 この内容で考えると、本来重要なのは第2階層であり、言い換えると自分自身の中でPDCAまわせる人材を登用したり、育成するというのがあるべき姿です。ところが、一般的には第3層だけを見て採用(調達)や評価をしているケースが多いように見えます。好奇心やチャレンジ精神が旺盛な人は、第3層の特定分野の知識やノウハウを自分自身でキャッチアップして行く能力を持ちます。それにかかる時間だけの問題です。
 ユニクロのファーストリティリングは、採用の際に自分でPDCAをまわした経験を持つ人かどうかを確認し、その経験の無い人は選択基準から外れるという考え方を持っていると聞いています。
 如何に第2層が優れている人を見分けるか、その能力を伸ばして行くような環境を作れるか、ということが「ビジネス目標の達成に貢献する」人材を育成するかが、企業にとって重要かということでしょう。
登録:2011-01-30 15:43:59
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