スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
ITスキルスタンダード研究所
スキルスタンダード研究所についてニュースサービスドキュメントコラムお問い合わせ
コラム
第46話:「ITスキル標準」企業活用状況 〜インタビューによる調査 その1
 キーワードの浸透度に比べ、あまりに情報量が少ない「ITスキル標準」。「経営者向け概説書」の発行は、活用サイドにとって朗報でした。まだ読んでいない方は、何をおいてもまず先に読んでください。しかし、それだけでは十分ではなく、HOWの部分がまだ不足しています。
「事例集」、「導入ガイド」の必要性
クリックすると拡大  「ITスキル標準」の活用状況などに対して、経済産業省やIPA、ITSSUGが中心になって情報発信しなければいけませんが、まだまだ情報不足の感は否めません。そこで、活用状況の具体的な調査報告や導入ガイドの必要性が関心の的になっています。「経営者向け概説書」にも導入手順の概略を載せましたが、担当者が実際に作業していくには、さらに詳細のプロセスを記述したものが必要になります。また事例も載っていますが、戦略からというトップダウンの考えで導入された企業はまだまだ少ないのが現状です。
 以上の状況を踏まえ、「活用状況の調査」、及び「導入ガイド」作成の作業を実施しています。活用状況の調査は、約60社の企業にご賛同いただき、私が直接お伺いして責任者の方、推進者の方とお話させてもらっています。すでに半分以上を終了し、かなり全体観が見えてきた感じです。春以降に冊子化して発行の予定ですが、先行して今回から連続でその内容をかいつまんで紹介して行きます。
各企業の活用状況〜導入検討中
 先に書きましたように情報があまりにも少なく、世の中の活用状況はどうなっているか、ということが大変分かりにくい状態です。また、導入といっても取り組まれている企業そのものによりかなり理解が異なるということも明らかになってきました。以下は導入の検討段階としている企業の状態です。

・人材開発の部署が事務局になり、各部署から担当を選出して勉強会や検討会を始めた。
 「ITスキル標準」を誰も理解できていないのに、内部だけでの進めるというのは無理がある場合が多い。誤解したまま進んだり、バランスが悪くなることも多く、結果的に多くの貴重な社内の工数を使い遠回りすることになり、しかも成果物に対して自信が無いということにもなりかねない。

・個人が担当者としてアサインされ長期間かかって調査・作成した。しかしどのようにインプリすればいいか分からず停滞している。
 会社から兼任ということで個人がアサインされ、時間を見つけて地道に調査勉強し、作業して成果物を仕上げたが、内容に自信がなく、どのようにインプリしていいかも分からない。場合によっては1年以上も時間をかけているケースもあり。
各企業の活用状況〜導入済み
 以下は導入済みと言われている企業の状態です。

・スキル診断をして現状を認識した。
 次のステップが決まっていない。診断の定期実施が目的になっている。
 エンジニア個人が自身のスキルアップの重要性について認識し始めるというきっかけにはなる。

・「ITスキル標準」のスキルフレームワークを参考にして人事等級制度に組み込んだ。
 「ITスキル標準」を理解していないHRコンサルに依頼したケースや、人事サイドだけで作業してしまったケース、また人事で作成したものをエンジニアにレビューしてもらっているケースなど何パターンかに分かれるが、適切なものになっていないものも多い。エンジニアにレビューしてもらうというのは一見良さそうだが、レビューする根拠や基本的な考えの提示がされないまま進むため、本来のレビュー作業ができていない。レビューしたというエビデンスが残るだけの結果になっている場合もある。
 うまくいっているケースでは、もともと存在した人事評価制度をうまく「ITスキル標準」に合わせてあり、整理の仕方だけを参考にされている。ただし、必要なスキルなどは柔軟に追加されている。

・数年後に必要とされる人材像をスキルベースで表現している。
 人事評価には当面結び付けない、自分たちのものになってからという明確な意志を持って運用されている。ただし、これは「ITスキル標準」を活用するというより、「ITスキル標準」をきっかけにして企業独自の考え方を整理しているという意味合いが強い。
 「ITスキル標準」準拠性の定義
 どうすれば「ITスキル標準」を導入したことになるのかという準拠性に関しては、以下の3点が考えられます。

1.導入手順における準拠性
 @導入の目的
  人材育成、調達、評価、etc.
 A導入の範囲
 B関与者(段階別)
 <内部>
 −経営層
  社長、取締役、執行役員、CIO
 −推進部署
  担当者、現場
 <外部>
 −コンサルタント
  HR、Sier
 −教育ベンダ
 −診断ツールベンダ
 C推進者
 −経営者
 −人材開発部署
 −人事
 −現場マネージャ、エンジニア
 Dレビュー方法、レビュー関与者
 <内部>
 −経営層
  社長、取締役、執行役員、CIO
 −推進部署
  担当者、現場
 <外部>
 −コンサルタント
  HR、Sier、認定ITSS導入コンサル、etc.
 −教育ベンダ
 −診断ツールベンダ
 E経営戦略、人材戦略の具体化
 −人材要求分析(要求モデリング)
 −ビジネスモデル機能分析(ファンクションモデリング)
 −必要スキルセット構築
 −目標人材モデル策定
 −育成プランニング
 −評価モデルデザイン
 F運用の具体化
 −運用モデルデザイン
 −担当者育成プランニング

2.導入成果物における準拠性
 @要求モデル
 Aファンクションモデル
 B目標人材モデル
 C育成プラン
 D評価モデル
 E運用モデル
 F(期待される)効果
 −経営戦略実現
 −事業戦略実現
 −人材戦略実現
 −組織運営効率化
 −適材適所/ローテーションの適正化
 −評価の公正化
 −エンジニアのモチベーションアップ

3.導入後の運用体制、運用プロセス、仕組みについての準拠性
 @運用体制
 −責任部署
  スキル管理運用、評価プロセス運用、育成プラン運用
 −担当者理解度、スキル
  スキル管理運用担当、評価プロセス運用担当、育成プラン運用担当
 A運用プロセス
 −通期での運用プロセス
  スキル管理運用、評価プロセス運用、育成プラン運用
 B運用の仕組み
 −スキル管理システム
 −スキルアセスメント
 −教育システム
 −評価システム
「活用事例」と「導入ガイド」の使い方
 コラム第44話で、「ITスキル標準」の理解〜導入〜運用において立場ごとにどのような資料が必要かを説明しました。たとえば導入責任者の方向けには現状は以下の通りです。
 導入責任者→概要理解   「概説書」      内容△
       詳細理解   「ガイドブック」       内容○
       導入手法理解 「経営者向け概説書」 内容○
       導入手順    なし ×
       事例集      なし ×

 今年は、活用のフェーズだと思いますが、そうだとすれば「活用事例」と「導入ガイド」は、導入において必須だということになります。

 次回から連続で各企業の活用事例を紹介して行きます。
登録:2011-01-30 15:42:59
 サイトの利用について | プライバシーポリシー | 情報資産管理方針 |
トップページへ戻る