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コラム
第45話:「ITスキル標準」活用への対応 〜その4
 第44話は、「ITスキル標準」を提供する側の視点から何が必要かを論点とし、活用を推進して行くには、活用側の様々な立場に合わせてどう考えるかを示した「ITスキル標準セット」なるものが必要だと定義しました。今回は、では活用側の現状はどうなっていているかを見直してみます。
「ITスキル標準」うんぬん以前の話
 ここ最近の日本企業の業績の回復振りには、目を見張るものがあります。ホテルなどで行われるセミナーやパーティも数が増えてきたそうです。その顧客はIT系の企業か外資が多いと聞きます。株価も続伸し、かつてのバブルを彷彿とさせる状況にも見えます。ひところの業績不振やリストラの嵐は影を潜めたかに見えます。
 本当にそうでしょうか。回復してきているのは誰の眼から見ても明らかですが、では果たして過酷な状況を耐え忍んできた影響は残っていないのでしょうか。
 仕事上でお付き合いのある方からの情報ですが、面白いデータがあります。現在、企業の内部プロセスについて、ISOなどで規定された認定を競って取得する動きがあります。個人保護法などの件もあり、セキュリティに関しても同様です。これは、標準化された大きな枠組みに合わせていくことにフォーカスすることになります。
 一方では、昔から企業内で続けてきた小集団活動が激減しているようです。これらは完全に反比例の関係にあるようです。小集団活動という言葉もご存じない方が多いかもしれません。仕事上で必要な事柄を何人かのグループで改善点などを話し合って行くという、日本企業ではQC活動に代表される伝統的な仕組みと言っていいでしょう。日ごろから感じている課題などを積極的に話し合って、自ら改善に大きく関わって行くという実に前向きな活動です。これらの活動の中で、同じ課題に対して他人がどう思っているか、また自分の解決策をいかに他人にうまく説明して納得させるかなど、コミュニケーションを含めて社会人として必要な人格を形成して行くにはもってこいの内容だと言えるでしょう。今の状況は、そのような自分自身を鍛える機会が少なくなってきているということになります。
 また別の観点で言えば、システム構築のメソッドなど基礎をしっかり学んでいない方々が大変多く、その方々が現在30代後半から40代にかけての方々で、シニアエンジニアや管理者になって、後進を育成する立場になられています。どうするかの基本が分かっていないのに、うまく人材育成の支援ができるでしょうか。また、リストラの嵐で自分の将来に不安を感じている人も多いはずです。そういう方々がうまく若手を育成できるでしょうか。自分のことで精一杯で、他人に構っていられないといった話も、そういった年代の方からよく耳にします。
トヨタの素晴らしさ
 ニュースや新聞でご存知のように、トヨタが生産台数世界第1位の座を、GMから勝ち取ろうとしています。最近名古屋に出かけることも多く、トヨタの話はよく聞きます。自ら独自のルールを多く持っておられ、社員、グループ会社の社員も含めて当たり前のように徹底して守っていると聞きます。たとえばドキュメント類は関係会社も含めて全て統一されているそうです。これはできそうでなかなかできない内容です。改善案が採用されたら1件5000円だそうで、そんな金額でもみんなが何件も常に考えているということです。その内容も自分が楽になる物だけではなく、あの部署の彼がこれで楽になる、という視点が入るそうです。何と素晴らしいと思いませんか?
 豊田最高顧問の言われたことがシンプルで突き刺さってきます。

「人がモノを作るのだから、その人を作らないと意味が無い。」

言われたことの作る対象はクルマだけではないはずです。ソフトウェアにしてもまさしく当てはまります。
では「ITスキル標準」をどう使うか
 CSKホールディングスの代表取締役でもあり、JISAの副会長でもある有賀氏がITSSユーザー協会のカンファレンス(12月7日)で講演されましたが、大変分かり易い話をされていました。現在建築業界が構造計算の件で大騒ぎになっているが、あれは建築業界に規定があるから、それをクリアされていないことが分かるわけで、ではIT業界でシステム構築が適正に進められたかは、どのように明らかにするのか、ということです。おりしも東証のシステムで続けて2度の大きな障害がありました。誰がどういう基準で承認したのかは、全くルールが存在しないというのが実態です。
 今までITエリアにおける人材育成は各社が独自に進めており、ほとんど共通性が無かったと言っても過言ではありません。結果的に人を育成すること自体を重要視できていなかったとも言えるでしょう。いまだに人材育成に投資することを良しとしない経営者の方もおられるほどです。
 このタイミングで「ITスキル標準」をうまく活用することに一歩踏み込む必要があります。企業自身が自作したわけではないので「ITスキル標準」がいいかどうか、使えるかどうかをレビューする必要は無いのです。活用すると決めてどうするかを考えて行くことが重要です。独自で考えて行くよりはるかに効率的に仕組みが構築できます。使える方法があるなら早く取り組んだ方がいいに決まっています。当HPドキュメントのコーナーに「経営者向け概説書」に載っている導入の流れをさらに詳しく説明したものをアップしました。有効性が実証された選択肢があるのだから、とりあえずやってみようは無しにしてください。よく考えて頭を使って取り組む内容です。
登録:2011-01-30 15:42:22
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