スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第33話:「ITスキル標準」は「調達」に使えるか
複数の大手ITベンダーが、「ITスキル標準」の「調達」への活用に動き出しています。また金融庁も調達条件にするということがIT情報誌に載りました。「ITスキル標準」がリリースされた当初より、一部から強制力を持たせるには「調達」しかない、しかも「政府調達」だという声が出ていました。果たして現状の内容は妥当なのか、検証してみます。
「調達」への適用例
大手ハードウェアベンダの関連子会社のA社が、調達で「ITスキル標準」を使うと聞いたのが4、5ヶ月も前だったでしょうか。子会社と言っても数千人の社員がいる「ITベンダー」と呼ばれるほどの会社です。どう使うのか調べると、外注エンジニアの契約の申請時に診断ツールの結果を提出させるのだそうです。それで、実際は現場では固有技術などが必要で、診断ツールだけでそのエンジニアの技術レベルが分かるのかと聞いたところ、その部分については実際の現場で判断するのだそうです。では何のために使うのかというと、購買部門が外注エンジニアの単価設定に使うということです。購買部門の目標達成のために「ITスキル標準」は、とても便利?だということでしょうか。
「調達」と「購買」
先ほどの例でいくと、本当は自分のところに派遣してもらうにしても、プロジェクト要員として来てもらうことだとしても、「調達」観点では間違いなく「プラットフォーム」ではなく、「UNIX」や「Windows」、「Linux」であり、「データベース」ではなく「Oracle」、「SQLserver」の技術者を必要としている場合が多いのです。現場に来てからでは遅いのではないでしょうか。迷惑するのは、現場の責任者であり、プロジェクト・マネージャーです。そんなことが分からないわけは無いので、従来通り現場での面接などで判断するしかないということになるのです。それで結局は、現場とはほとんど関係の無い購買部門での価格決定の交渉に使われるだけだということです。
私はそれでもいいと考えています。ただし、正しい評価基準を使っていることが前提です。トレーニングを売るためだけに作られたような「スキル診断ツール」は、このような場合には対象外です。私も教育ビジネスを経験しているので良く分かりますが、教育ベンダーがトレーニングを売るために「ITスキル標準」に飛びつくのは当然の考えです。「ITスキル標準」を理解している、していないは関係ありません。そういうことを望む方が無理で、ビジネスのための道具としての位置づけでしかないのです。そうではなくて、それを使う側の問題なのです。使う側が「ITスキル標準」の目的を理解していないから、おかしな方向になってしまうのです。人材開発担当や、もっと言えば経営者の問題だと思っています。
「調達」の種類
一言で「調達」と言っても次のように3種類あります。

@企業間で(ユーザー企業がITベンダーなどから)システムやサービスを調達する。
A企業間でプロジェクト要員、IT要員を調達する。
B組織構成要員を調達する。(社内、中途採用)

@は少し主旨が異なるので外すと、Aについては「何ができるか」が見たいということが主体なので、そのまま「ITスキル標準」を使えることになります。ただしBはビジネス観点で言うと、何度もコラムに書いている「目標人材モデル」の考え方が必要になりますので、企業や組織の目指すモデルが先に必要ということになります。しかし中途採用をとるという観点だけ見ると、「何ができるか」を主体に考えることもできます。
購買部門としては、この「何ができるか」という観点がもっとも重要になるということでしょう。
「調達」条件に使うための条件
私は3年以上も「ITスキル標準」に関わり、国の複数の委員会にも出て、実力ある企業への導入コンサルもこなしてきました。その上ではっきり言えるのは、「ITスキル標準」の現在の提供形態では、人材育成にも調達にも中途半端で使いにくいということです。何とかできるだろうかとずっと考えてきましたが、導入する場合は様々な問題点が見えてきます。それらは経験したものでないと分からないのです。
私は、「ITスキル標準」を提供する立場にも立てますし、それを活用する立場にも立てますが、客観的に見てももっと工夫が必要です。「知識とは何か」とか「スキルとは何か」などという禅問答のような議論ではなくて、実際に活用するにはどうするかという泥臭い議論が必要なのです。もし、個別技術や製品技術を「ITスキル標準」にうまく組み込むことができれば、しかもそれを一元管理してメンテナンスして行ければ、かなりの部分が解決します。組み込めなくてもリンクできるだけでもいいのです。今までこのことを議論する時に、あるべき論や提供側の理論が先に立つという状況を、まざまざと感じてきました。しかし、現場では現実的に必要とされる場合が殆どなのです。「ITスキル標準」があるのだから、何としてもこの部分を今までのように各企業で解決する努力をしなくていいようにしたい、という考えで進めてきました。やれないはずはない、と思っていますが、賛同者がもっともっと必要です。各企業が必要なことであり、今まで何度もチャレンジしてうまくいかなかったことですが、このタイミングを逃すともう実現不可能な気がします。ITSSユーザー協会の委員会で、この要になろうと進めています。是非ご支援下さい。
登録:2011-01-30 15:38:53
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