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コラム
第28話:「ITスキル標準」の活用状況〜動き始めた先進的企業の数々・第3回リクルート社〜
真剣に人を育成するという命題に取組まれているリクルート社の思いが、形になってきました。外資系ユーザー企業であるファイザー社が先陣を切っていますが、国内ユーザー企業としてIT部門のあり方についての指針となる内容です。
国内ユーザー企業の現況
クリックすると拡大 外資系ユーザー企業であるファイザー社は、IT部門の位置づけが非常に明確で、採用もIT部門として実施されています。つまり、IT部門への入社を希望された方が、入ってこられるということです。しかしながら国内ユーザー企業は、入社後にIT部門に配属されるのが一般的です。当然本人にとってIT部門の仕事内容は、入社を希望した時に描いたイメージとは異なってしまうのが常です。
また、別の視点としては、ユーザー企業はIT部門のあり方について、強く問題意識と危機感を持たれているというのも事実です。
先ほどの話も含めて、理由としては次の通りです。

・経営者からIT部門に「IT戦略」の提案や実施を強く求められ始めた。
・要求に応えて行くには、以下の大きな問題を解決しなければならない。
 −これまでの経緯でITベンダーへのアウトソースを進めており、スキルを持つ人材が
  内部に少ない。
 −RFPまでベンダーにお任せで、さらに提案された金額を予算化しているケースもある。
 −IT部門のメンバの多くは、IT部門に配属されることを期待していなかった。
  したがって、今の仕事を自分の将来に結びつけるのが難しい。

ユーザー企業は、このような問題を抱えておられ、如何に経営戦略にあった「IT戦略」を立案・実施して行くか、という経営目標を見据えるということを命題として、真剣に捉えておられます。また一方で、IT部門の皆さんのモチベーションをどのように上げ、パフォーマンスを最大限にして行くか、それぞれ個人の将来計画にどう結び付けて行くか、ということも重要な課題です。上司部下のコミュニケーションに、何をどのように使用するかも現実的で大切な課題です。
R文化
リクルート社は、誰でもその名を知る超有名企業です。今まで色々な斬新なアイデアを元に、市場を切り開いてきました。ITとの関りも強く、常に最新の技術や手法を採用しながら日々前進している企業です。入社を希望する若者も多く、自分もその中でクリエーターとして活躍している姿を描くに違いありません。
そういう先進的な企業には、やはりその文化に合った方々が集まってくるはずです。個性的な方々の独創力が、いいサービスを提供するということに特化したこの企業の推進力になっているということは、間違いないと思います。多くのリクルート社出身の若手経営者やクリエーター達が、第一線で活躍されていることが、その証の一つです。
IT部門の課題と目指すもの
先ほどの国内ユーザー企業のお話しの中で、IT戦略をプランニング・推進していくための人材が不足しているという意味のことを書きました。しかしこれは、リクルート社には当てはまりません。この企業を目指して入ってこられた方々の能力は、他を圧倒します。クリエーターになりたくて入られた創造力や理解力、実行力をお持ちの方々ですから、この部分は大変特徴的です。では何を課題として挙げられているかというと、以下の1点だけです。

・如何にIT部門のメンバのモチベーションを高め、活き活きと仕事をしてもらうか。

やはり、リクルート社も入社して研修を終えた後に配属されるのですが、殆どの方がIT部門への配属を予想していないのです。期待していないと言った方がいいかもしれません。つまり、IT部門の仕事はメインストリームではないと思っているということです。IT部門に配属された方が、同期が早くも活躍しているのを見てあせってしまうというのも、その分かり易い例かもしれません。
リクルート社のビジネスに、ITは大変大きな役割を果たしているのは事実です。その重要な部分を受け持つIT部門は、リクルート社の根幹を成すと言っても過言ではありません。自らのキャリアパスの中に、その部分をどう位置付けるかの分かり易い指標を、如何に提供するかが課題との認識があります。
目指す人材像の構築
リクルート社のIT部門はFIT(Federation of IT)という部門名になっており、IT戦略を支えておられます。また、以前から先ほど書いた課題にチャレンジされていて、FITとして目指すべき人材像の大枠や定義については、かなり議論されている状態でした。
IT部門が対象ですから、「ITスキル標準」を使うのは効果的、かつ効率的です。「ITスキル標準」の活用に関しては、弊社が進めている導入手法を採用いただいておりますが、まずファンクション・モデリングから入り、リクルート社FITでのあるべき姿をファンクションで表現しました。ここで驚いたのは、専用の開発手法体系や、手順をきっちり持っておられたことです。大手のSIベンダーでもなかなか使いこなせていない代物ですが、FIT用にアレンジされた内容は、今回のファンクション・モデル策定に大きく活用できました。
次に、そのファンクションから遂行するためのスキルセットに変換していきますが、FITではヒューマンスキルを重要視されておられます。ご存知のように「ITスキル標準」では、その部分は一般的なものを共通化して定義してある状態で、なおかつ数も少ないということもあり、ヒューマンスキル系については、専門のコンサルティング会社を別途採用されています。
「ITスキル標準」の定義自体は、少し表現を変えたくても変更することができないので、別途自社独自のスキルとして追加していく必要があります。内容自体がユーザー企業の表現になっていないこともあり、同じユーザー企業のファイザー社でも、「ITスキル標準」自体のスキル定義は50%程度しか使えませんでした。
ヒューマンスキル系も、リクルート社に合った内容にしなければ、現場から受け入れ難いということで、通常使用している言葉などを使う方が現実的だというわけです。
ここまでやったから期待できる効果
FITでは基本職種を6つに分類し、それぞれに特徴的な名称をつけておられます。会話の中に「ウキウキするような」という言葉が頻繁に出てきます。それが表れた職種名で、「ITスキル標準」のITスペシャリストなどどこにでもあり、誰でもつけそうな名称ではありません。理論的な話ばかりでなく、リクルート色が出た部分ですが、これは今後色々なところでリークされていきますので、楽しみにしておいて下さい。
その職種ごとに「ITスキル標準」を主体としたIT系スキルと、HRコンサルが出してくるヒューマン系スキルで、人材像を構築していくわけです。さらにそのスキル群の強弱でレベル相場観を作っていきます。今まさにその真っ最中ですが、FITでの仕事を進めていく上での「ウキウキ感」を如何に出していくか、どのような言葉の組合せが適切か、などの議論をしながら進めています。大変ですが、まさに人材育成の根本のところを作り上げているという感じで、こちらがウキウキしてしまいます。
9月末までには完成して運用に入られる予定です。続編を楽しみにして下さい。
登録:2011-01-30 15:37:51
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