スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第24話:「ITスキル標準」の活用状況〜動き始めた先進的企業の数々・第1回 ファイザー社〜
先回は、「ITスキル標準」の普及が進まない実態をお話ししましたが、そのような状況下で着々と動き出した先進的な企業について、今回を含め5回にわたってご紹介いたします。まず1回目のファイザー社を皮切りに、テンプスタッフ・テクノロジー社、リクルート社、CTC伊藤忠テクノサイエンス社、サイバード社と続く予定です。
「ITスキル標準」導入コンサルティングへのステップ
クリックすると拡大 2004年6月末、私は「ITSSユーザー協会」の専務理事として、また日本オラクルのVPとして自分の将来を決めかねていました。ITSSUGは会員数100を突破しNPOの認可が下りて、新しいフェーズに入ろうとする段階で、その活動を日本オラクルの社員として半年も続けてきて、そろそろ決着をつけねばならない時期に来ていたのです。現場で自分が課題だと思ってきたことを解決するための手段が「ITスキル標準」であり、それをどう使うかをITSSUGで議論し、自分の中でも試行錯誤を繰り返して「導入手法」をかなり具体的に練り上げていました。日本オラクルに残って可能な範囲でITSSUGをサポートしていくか、日本の技術者のため、自己実現のために思い切るかのどちらかですが、考えていることを是非実践したいという強い想いがありました。しかし、理想だけでは生活して行けない現実に直面していました。
そんな時にファイザー社から声をかけていただきました。
ファイザー社の決意
ファイザー社は、ニューヨークに本社を置く世界最大の製薬会社で、ファイザー・ジャパンはアジア・パシフィックの一員という形態です。また、ファイザー社では、ITは経営にとって最も重要な戦略の一つという位置づけが明確です。CIT(Corporate Information Technology)は、そのITをシェアド・サービスで各事業部に企業情報システムとして提供し、さらにITインフラを維持管理していくミッションを持つ部署です。CIT-Asia Pacific全体は600名ほどの社員で構成され、CIT-Japanの社員としては30数名の方がおられます。そこに日本ヒューレット・パッカードからアウトソーサーとして120名以上の方が来られています。
ファイザー社では「IT部門のあるべき姿」を目指し、人材育成のための仕組み作りにチャレンジされており、「ITスキル標準」にも着目されていました。問合せがあった時に言われたことが印象的でした。「人事制度にそのまま取り入れるなんてどうかしていますね」、「診断ツールは一過性ですよね」、直接様々なことに関ってきた私が、状況認識していた内容と全く同じでした。是非一緒にユーザー企業のベスト・ケースを作り上げたいと心から思いました。
その後お会いしたのは、CITアジアパシフィック責任者の矢坂取締役でした。自らのリーダーシップでこのプロジェクトを進めておられ、大変強い意志を感じたのを覚えております。そのために優秀な方を専任でアサインされ、並々ならぬ意欲を感じました。
第1次フェーズ2004年8月〜11月
第1次フェーズは、CITの「To Be Function Model」を作成し、その実現のために必要なスキルを「ITスキル標準」、「行動基準」、「Job List」、「遂行能力定義」などから切り出し、「目標人材モデル」を構築いたしました。CITは、ファイザーのインフラを支える部署でもあるため、ハード・ソフトの詳細定義まで必要になる部分もありましたが、ITSSユーザー協会で昨年1年間実証実験を実施した上で策定した「スキル領域定義コンテンツ」を使用しました。これは、「ITスキル標準」で定義されている長い文章ではなく、簡潔に分かりやすくすると同時に、「ITスキル標準」には盛り込まれていない業界知識経験・業務知識経験・公的資格・ベンダー資格・個別技術を追加したものです。これこそTo Be Function Modelの実現のために必要なスキルを選択する「共通の辞書」になります。
「目標人材モデル」を構成するスキル群は、スキルズ・インベントリ「SSI-ITSS」に搭載され、「目標人材モデル」はCIT Frameworkと呼ばれる「ITスキル標準フレームワーク」と対を成す独自フレームワークで可視化されています。
「SSI-ITSS」の運用を受け持っていただいたのは、ITSSユーザー協会認定ASP業者のITアソシエイツです。
ITアソシエイツからは、若く大変優秀なコンサルタントである樽谷氏が、第1フェーズ開始当初から参加いただいています。
樽谷氏はITSSユーザー協会設立にも協力いただき、私の考えやコンサルティング手法を、このプロジェクトを通じて自分なりにうまく消化され、いまやりっぱに正統派導入コンサルティングを提供できる数少ない一人です。
第2次フェーズ2005年5月〜8月
第1次フェーズは、CIT社員のためのフレームワークや仕組みづくりが目的でしたが、第2次フェーズはその内容をアジアパシフィックへ展開することと、日本HPからCIT-Japanにアウトソーサーとして来られている120名の皆さん用のフレームワークを作成し、運用に乗せることです。アジアパシフィックへの展開に英語は必須ですが、英語化したスキル定義コンテンツは現在最終レビューの局面に来ています。これができれば、マルチリンガルに対応している「SSI-ITSS」に搭載するだけです。仕組みや運用方法は今までと同じで、ほぼ問題はないでしょう。
ファイザー社のお考えは大変はっきりしていて、日本HPのアウトソーサーの皆さんは別会社の方々ではあるのですが、CIT-Japanのメンバだということです。共にチームとしてエンドユーザーに対し、いいサービスを提供していこうという明確な姿勢をお持ちです。また、日本HPの皆さんはファイザー社CIT社員の皆さんよりテクニカル・スキルが必要です。そうなってくると、「ITスキル標準」だけでは表現できず、追加した業界・業務以外に個別技術も必要になってきます。
CITはエンドユーザーに対して具体的な「サービス・メニュー」を持っておられますが、その提供を社員と日本HPのメンバの総合力で、レベルアップしていくということになります。現状のメンバでそれが可能か、ギャップがあるならどこをどうてこ入れすればいいか、などなど視点はやはり「サービス・メニュー」であり、新フレームワークはそこにフォーカスしたものになっています。第1フェーズのフレームワークは、社員の方しか使用されませんが、新フレームワークは社員、日本HPの双方が使うことになります。新しいアウトソーシングの姿が、こんなに明確に、これほど具体的に示されたのは感動的でさえあります。
これからの方向性
矢坂取締役とお話ししていて、ファイザー本社も今回の取り組みを大変評価されていて、ワールドワイドで使ってもいいのではないかというお話しまで飛び出しているとお聞きしました。そうなると矢坂取締役と私の狙いはISO化になります。既に経済産業省には相談をかけつつありますが、ISO化を進める場合、民間側に大きな負担があるといいます。そんなに簡単な話しではないので、軽々しく言える内容ではありませんが、世界のファイザー社が使うとなれば、かなりのインパクトになります。大きな目標としてチャレンジしがいがあるというものです。

これほどまでに、「ITスキル標準」の考え方を上手く取り入れ導入できたケースは、私の知る限り皆無で、ファイザー社だけです。ファイザー社の取り組み内容は、日経ビジネス、日経コンピュータなどの情報誌や、新聞各紙などに何度も取上げられています。経済産業省やIPAも、それを良く認識されていますが、よくファイザー社の次はどこか、という話題が出ます。それは、もうすぐ明らかになります。
このコラムで6回にわたって引き続き登場する各社は、現在導入の真っ最中ですが、順次活用事例として紹介できるところまで来ています。各社それぞれ別々のビジネスモデルで、導入手法は同じでも、アプローチや考え方などそれぞれで大きく違います。企業戦略から入っているので当然ですが、これらは必ず異なるエリアでの本格導入の初めてのケースとなるでしょう。

・ファイザー社 ; 外資系ユーザー企業IT部門
・テンプスタッフ・テクノロジー社 ; 派遣系SI企業
・リクルート社 ; ユーザー系企業IT部門
・CTC伊藤忠テクノサイエンス社 ; SI企業
・サイバード社 ; 携帯コンテンツ提供・IT先進企業

おかしな「ITスキル標準」導入は、これで全部吹っ飛びます。
楽しみにお待ち下さい。
登録:2006-04-15 17:58:31
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