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コラム
第21話:「ITスキル標準」と「MOT」
「ITスキル標準」に不足している「ヒューマンスキル」については、第18話で取り上げました。今回は、やはり希薄だと思われる経営者の視点について、「MOT」を取り上げながら考えてみます。
MOTとは
まず初めに、簡単に「MOT」について触れておきます。
「MOT」とは「Management Of Technology」の略で、技術を経営資源として戦略的に活用するために、「Technology」と「Management」の双方に精通した経営者による経営スタイルを指します。
1940年代にマサチューセッツ工科大学(MIT)で「MOT」コースが生まれたことが原点です。本格化したのは、1960年にNASA(米航空宇宙局)がアポロ宇宙計画関連の技術マネジメント研究のために、MITの「MOT」リサーチに予算を計上し、「MOT」の研究が始まってからです。
その後、1990年代に米国の産業競争力が再生した背景には、「MOT」を主眼とした人材育成があったからだと言われています。
日本では、90年代後半からのアジア諸国の脅威によって注目され始め、2003年以降企業と大学が連携して「MOT」人材の育成に向けて様々な取り組みが始まっているようです。
企業経営にIT戦略を最大限活用するためには、核となる技術をベースとして新たなビジネスを創造できる人材の育成、技術と経営の双方を理解し、事業として技術価値を最大化できる人材の育成が必要です。
MOTの重要さ
今日、確固たる位置の多くの企業は、技術者のトップの方が努力して、築いて来られたケースが多いと思います。私見ですが、今そのような企業が競合他社に抜き去られて、なかなか浮かび上がれない状況が目立っているように思います。SONYしかり、SANYOしかりで、ここ最近まで引っ張って来られたトップの方は、技術者出身ではありませんでした。それが全ての原因ではないと思いますが、進歩が激しい現状を考えると、技術的な視点で経営判断をするかしないかは、今後の激しい競争の中では、かなりのインパクトがあると考えられます。
「ITスキル標準」での経営視点は?
「ITスキル標準」は、IT人材のマネジメントの効率化や、育成計画を策定するために有効なツールです。企業や対象エリアの弱み強みを可視化できるだけでなく、何処にどう投資すれば、経営にとって必要な人材を育成することになるかが明確になります。従って「ITスキル標準」導入においては、経営戦略が重要なファクターになります。ようやく最近になって多くの企業が、この視点からスタートしなければ、上手く導入できないということを理解され、様々な動きが出てきました。
これはまさに、「ITスキル標準」を使って「MOT」の視点で企業の実態について把握したり、人材戦略を立てマネジメントする、ということになります。
しかしながら「ITスキル標準」で定義されているのは、この経営者の視点ではなく、現場の技術者の視点が主体になっています。従ってキャリアパスを設計する時も、現場での技術者のトップをイメージできても、経営者への道は表現できません。
7月6日(水)IPAプロフェッショナル・コミュニティ・フォーラム ITアーキテクトの報告について
IPA・プロフェショナルコミュニティのITアーキテクト委員会の主査は、日本IBMの榊原氏です。榊原氏とは昨年のIPA情報処理月間のパネルディスカッションでご一緒しました。大変スマートな方で経験・実績、及びお考えも申し分ない方で、私も話していてウキウキする数少ない方です。7月6日のフォーラムで活動報告をされていましたが、重要だと思われた点が2つありました。
1つは、ドラフトだということでしたが、ITアーキテクトのあるべき姿を大変明確なモデルで表現されて、今後に大いに期待が持てたことです。ドラフトということで、その部分の資料は配布されなかったので残念でしたが。
もう1つは、ITアーキテクトの活動範囲が、広がっていると話された点です。
ご自身も話されていましたが、ITアーキクトはProjectの技術的な部分に責任を持ち、PMはProjectのコストや期日などの達成に責任を持つ、という切り分けです。
ところが、ITアーキテクトは企業戦略を理解し、それに合ったMethodで技術的要素を組み立てていく必要があります。その内容によってPM的な活動もあるでしょうし、また経営戦略に深く関与する姿が見えてきます。
私は、そこに「MOT」の考え方が重なってくると感じています。
ITアーキテクトとMOT
「ITスキル標準」は「MOT」の考え方が希薄ですが、榊原氏のお話しからもITアーキテクトの次のステップとして、企業のIT戦略を立てる位置があってもおかしくありません。私は、ITコンサルタントの次のステップとしてもあり得るかと考えていましたが、コンサルタントの気質や仕事の責任範囲から少し違和感がありました。
未だに最も分かりにくく一般的でないITアーキテクトに、これまでかなり技術よりのイメージを持っていましたが、榊原氏のお話しのおかげで、かなりすっきりした気がします。
「ITスキル標準」では、CIOやCTOなど経営層への道は描けませんが、それでは片手落ちなので、内部にその考えを取り込むか、もしくは別のものを用意するか、また、第11話でもお話しした「ユーザー版スキル標準」で実現されるか、何らかの手立てが必要です。しかも、ベースは共通化しておかないと使えないものになる危険性があるので、しっかりとした統制が必要です。
ここは、かなり重要なポイントだと思いますので、私も積極的に係わって行きたいと思っています。その活動内容は、このコラムの中でも逐次報告していくつもりです。
登録:2011-01-30 15:34:27
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