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コラム
第210話:緊急提言!ITSSの今後の方向性について
 2002年12月にITスキル標準が公表されて10年が経ちました。退場された関係者の方も多く、私が一番長く提供側と活用側の双方で関わっていることになります。今後どう考えればいいのか、大変難しい問題でもありますが、誤解している方、思い込んでいる方も多い中、CCSFの登場もあり現実と将来を見据えて提言したいと思います。
ITSSの捉え方
 詳しい中身ではなく、どんなものなのか、また使おうとした人たちがどう受け止めたのかを端的に表現すると、次の通りです。

・参照モデルとして明確に定義
 「標準」がついた名称ですが、いわゆるスタンダードではないことが、公表されているドキュメントに明確に記されています。
 さらに、ITSSの職種や専門分野は人材像や役割ではなく、人材像や役割は企業のビジネスや実態に合わせて、自身で定義する、ITSSをそのまま使うのではなく、必要なものだけを参照する、となっています。

・IT業界のものさしか?
 そうはいっても、IT業界を知らない方々や学生などがどのようなものかを知るには、職種・専門分野がわかりやすかったのは事実です。他に見て分かるようなものは殆どありません。また、IT業界の中で自社の位置づけはどの程度か、ということは経営者の方々がITSSの使い道として受け止めたことのひとつでした。

 しかし、研修ベンダが自社ビジネスのために持っているスキル診断ツールでは、独自のロジックを使っているためITSSとかけ離れているものが多く、とても公平性が担保できません。そもそも目的が異なります。公的な認定資格が必須ですが、それもないことから、客観的に判定する方法は現在もありません。

 つまり、客観的に判定するものがあればもちろんいいに決まっていますが、ITSSの定義自体を見ても抽象的すぎるのと、成熟度が高くなく、実際に現場で使おうとしても使えないという現実があるということです。具体的には、スキル熟達度を見ても、達成度指標と混ざった表現で、スキルなのか成果なのか分かりません。スキル熟達度は、個人が持つ能力の成熟度であり、達成度指標は、その個人が仕事をして出した成果を評価するための指標です。それが、考え方は優れているのですが、定義内容が実際には分かりにくく使いづらいのです。これらは、企業導入の経験がなく、知識しかない方には分かりにくいことです。
ITSSの今後にかかわる様々な意見
 ITSSをIT業界の指標とすることを希望、もしくは昔から関わっていて知識だけある方々(企業導入に関わったことや経験がない方)は、ITSSに品質管理の職種がないから入れるべきだと意見してきました。最近ではクラウド対応の職種がないから見直すべきだという意見も聞こえてきます。国としてそういうことをしっかり示すべきだという方もいます。

 でも、そうなのかなと思います。先述のように指標として成り立つなら、あった方がいいにきまっています。それができない現実と理由をご存じないとしか思えません。現実をしっかり知って、もっと勉強してからどうあるべきかを語るべきです。

 また、今後も環境は変化していくことになると思いますが、常にウオッチしていて変化のある度に職種を変更・追加していくのでしょうか?そのような非現実的なことを継続していくことは不可能です。Howを考えずに思ったまま発言するのは子供でもできます。

 過去を見てもイノベーションはビジネスの最前線から沸き起こってくるものです。たとえば、クラウドはUS Amazonが膨大な在庫や手配をするための巨大なインフラを有効活用するために、切り取って貸し出しを考えたことからスタートしています。それを、国にあるべき姿を求めても不可能です。ベンダーを集めて委員会を開き、1年かかって何かを発表することくらいしかできてこなかったのが事実です。これは受け止めないといけません。ならば、ビジネスの中からあるべき姿を考えたり、使えるならば精査の上で共用したりできるようなインフラ的な道具を提供したり、最新の情報を提供できるような仕組みを整える方が、よほど現実的です。
今後の姿とCCSFへの期待
クリックすると拡大  そのような現実や今後の考え方を入れ込んで、CCSFが出来上がっているのです。そういうこともご存じなくITSSだけ見て他を見ないのは大変偏っていることになります。

 3つのスキル標準についても、共通する部分が多いのにもかかわわらず、それぞれ別個に改訂したり委員会で議論したりしています。これも効率的ではありません。活用サイドのことを考えない作品化するプロセスの典型です。

 産業構造審議会でも議論されましたが、ITサービス企業だから、ユーザー系企業だからという垣根を設けて語るのは既に時代遅れです。IT人材としてあるべき姿を語ることこそ重要であり、テクノロジとしてSaasやクラウドなどを位置づけることが大切です。ですから、ITサービス企業だからITSS、ユーザー企業だからUISSなどという前提は破たんしています。ITSSに実装技術を入れ込むのも将来を考えるといいとは言えません。

 このような環境から、CCSFで集中管理し、時代の流れや環境変化に合わせて見方を変えていくという考えに至ったわけです。

 このことを理解できなければ新たな時代を支える人材を創っていくことはできないと考えています。過去からの固定化した考えを持つ方は、考えを改める必要がありますし、厳しい言い方ですがそうできないのだったら退場してもらうほかありません。
登録:2013-04-23 11:18:47
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