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コラム
第201話:CCSFの活用方法 〜番外編 2 企業表彰審査で思うこと
 スキル標準を活用して人材育成のPDCAをうまく回している企業を表彰する制度があります。私は審査員の一人で今年で3回目になります。この3年間で多くの企業を審査してみて一貫して感じるのは、推進者が「人材像」を理解していないということです。

人材像が定義できない?
 ITSSなどの職種定義をそのまま使っているというのは話になりませんが、企業戦略や将来プランを基にし、目標とする人材像を設定しないと方針に沿った人材育成ができないのは当然です。それを定義できていない企業があまりに多いと感じます。それがなければ、キャリアパスを示すこともできません。それを推進者の方が理解できていないのです。

 審査時に、裏を取るためもあって後半で現場リーダクラスの方々にもインタビューするのですが、そこで「5年後に自分自身はどうなっていたいですか?」と質問すると、「課長」という答えが返ってきます。

 IT人材なので技術的なことも含めて、役職ではなくてこういうことができる人材といったような期待する答えはそこにはありません。

 若手リーダーが5年後の自分の姿を役職で表現するのは、その場にいる者として本当に寂しい限りです。それを問題としない風潮があるような気がします。

 会社として目標とする人材像を示せていないのも、大きな原因のひとつだと感じます。制度化することやスキル標準の利用そのものが目的になっていて、その考えで仕組みや体制を作ってしまっています。

 特にIT人材については、環境変化も激しいのでTo Beや目的-手段を明らかにしていく必要があると思っています。
企業で人材育成を進める上では、これらを加味してよく議論していく必要があるはずです。

 一番大事な「魂を入れる」ということができていない、そういうことだと思います。


人事制度とのリンク
 今迄のお決まりの人事制度だけでは、企業の目標達成や個人の達成感、夢を具現化するのは難しいと思います。
 あるべき人材像やキャリアパスを基に、将来設計ができないのは、ITの世界で従事する方々にとっては本当に不安になることでしょう。

 人事担当者がスキル標準とのリンクを考える場合が多いのですが、IT系のメンバからすると、技術の分からない人事担当者が定義したものなんて、はなから信用しないという風潮もあります。

 また、社内だけで進めた場合は、さらに利害関係もあるし、コンサルなど外部有識者を使うほうがずっとうまくいく場合も多いのですが、IT企業の場合は自分たちでやるものと思い込んでいる節もあります。

 ユーザー系企業は自分たちができるものとできないものはしっかり認識できる場合が多いと思います。

 もっと柔軟に考えることで、ずっと効率的・効果的に進めることができるのですが、現実はなかなかそこまで考えがいきつかないということでしょうか。

 かと言って、人材像を定義できたとして、絵に描いた餅になってしまう危険もあります。そうならないためにも、適切なタイミングで人事制度とうまくリンクさせる事が必須だと考えています。

 しかし、制度化を目的として不十分なまま施行したり、理解不足のままで具体化しようとする企業が多く、うまくいかなかった例が増えたと感じるのは私だけでしょうか。

 そのせいか、変に制度化=失敗というイメージが先行して、腰が引けている企業が目立つのも事実です。その上、各企業の人事制度は歴史もあり、ステークホルダーも多いので、手を付けにくいという現実もあると思います。

 そういった多くの事情や都合に押し流されるのではなく、これからの激しい環境変化に勝ち抜くにはどうすればいいか、単なる人材育成の話でとどめるのではなく会社を挙げて議論すべき時だと強く感じます。
登録:2012-09-26 10:48:32
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