IPAより公表された共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)について、考え方や使い方についての解説、第4回目です。先回に引き続き要求分析を詳しく見ていきます。
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要求分析の必要性 |
先回は、要求分析の必要性について述べました。
企業の目的に沿った必要人材を明らかにし、育成・維持・確保していく計画を明らかにしない限り、PDCAを廻していくのは難しいということです。 たとえば、スキル標準を評価に使いたいという企業はかなり多いことに驚かされますが、人材戦略を立てるための材料を用意し、完成度の高い計画を立案後、それを実行していくことにより、正当な評価ができるのです。目標にあったプランニングもできないのに、適切な評価ができるわけもありません。
企業として最も重要なことの1つである「人材を育成すること」について本気で考えるなら、優秀な担当者をアサインすることは必須ですし、もしそうでない状況ならば、急いで見直す必要があるということです。
「何のために」を明らかにし、その実現手段を具体的にできる人材を推進者として抜擢することが、スキル標準導入活用を進める上で最も重要です。
要求分析のスッテプは、そういう推進責任者の方にとって、大変有効な方法であることは間違いありません。 |
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要求分析のアウトプット |
要求分析のアウトプットは「自社要件定義」ですが、作成するのにロジックツリーを使うと効果的です。ロジックツリーによる階層化は、大別して「目的−手段」、「全体−部分」、そして「結果−原因」のつながりで実施するのですが、要求分析については目的−手段の関係で階層化します。
図は、かつてCIOマガジンにも掲載された大手保険会社のものです。
トップの「大手保険会社のBEST IT部門になる」は、いつもCIOが口にされる目標で、いわばスローガンのようなものです。全てがこの目的の手段としてつながってくることになります。
2階層目辺りの「ビジネスの整合性」、「効率的なデリバリー」、「革新的ソリューション」、「技術の簡素化」、「戦略的ソーシング」、「有能な人材」については、「大手保険会社のBEST IT部門になる」ための手段という位置づけです。通常要求表現は、「〜を〜する」ですが、冗長を避けるためにあえて体言止めで表記しています。
この辺りまでは、社員の方々に常にインプットされている内容となります。
次に、図では「ビジネスの整合性」がブレークダウンされています。「ビジネスの整合性」を目的として「ビジネスプランの分析」、「実行リソースの正確な把握」などが手段として展開されます。さらに「ビジネスプランの分析」を目的と言い換えると、「経営方針、ビジネス目標の把握」や「市場の変化、ビジネス環境の把握」などが手段として展開されるわけです。
こうして短文での目的−手段の階層化を行うと、1つの目的に対して全てが手段として成り立っているということの見える化ができることになります。責任者や管理層は、もちろんよく理解できますし、若手であっても自分がやらなくてはならないことが全て企業や組織としての目的につながるということが明らかになり、ひとつひとつの意味の理解やモチベーションアップにつながります。 若手が事業計画を見ても自分の存在や役割を意識できずモヤモヤした感覚になりがちですが、この方法だと非常にすっきりした理解につながるというわけです。 |
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要求分析のアウトプット 人材についての要件 |
「有能な人材」を育成していくことに関するブレークダウンがこの図です。 特に人材に関して取り上げたいがために、上位の階層に持ってきています。
求める人材と、それに対して何を要求しているかが明らかになります。
このように、要求分析は企業として組織としてどうありたいか、ゴールはどこか、そのために何をしなければならないかを明確にしていく大変重要なステップです。
以降のステップではCCSFより有効活用できるコンテンツが用意されていますが、要求分析には見本ののようなものは無ありません。企業によって考えが異なるわけだし、目標も異なるので当然なのです。 企業独自で頭を絞って明らかにしていくことが重要なわけです。また、このステップの実施によって推進者同士の共通理解やゴールの共有ができるので、成果物だけではなくプロセス自体も大変重要なものです。
〜その5につづく |
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登録:2012-07-10 14:37:27
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