To BeとAs Isのギャップから、それを埋める計画を立てる。よく使われる表現です。では、肝心な人材像を人材育成の視点で捉えた場合、どう考えればいいのでしょうか。
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To Be人材像の定義 |
第一に、企業としてビジネス目標を明確にする、その次に目標達成に貢献できる人材像を定義するという流れになります。 ITSSやUISSなどのスキル標準を活用する場合に陥りやすい失敗は、人材像を設定しスキル定義をすることから入ってしまうことです。つまり、その人材像を定義した人の考え方に偏ってしまい、それをほかの誰にも伝えにくいという現象が必ず発生します。そうすると継続するのが難しくなるわけです。その人が担当から外れた場合、立ち行かなくなります。もう少し突っ込んで言うと、属人化してしまいビジネス目標を織り込むことが抜けてしまうという結果になってしまうわけです。
To Beの人材像をいかに定義するか、そのためには人材像の構成を共通認識しておく必要があります。また、スキル標準は、参照モデルであり部品ですから、人材像として組み立てるロジックが必要です。 |
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仕事をするために必要な能力と、成果を出すための能力 |
ITスキルとコンピテンシー(ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキル)の関係について明確にしておきます。
スキルは、カッツ教授のモデルの表現でいくと、専門能力、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つに分けられます。
IT人材の場合、専門能力の主体がITスキルであり、ITSSやUISSはここだけを対象として定義されています。ただし、実際にはITスキルだけではなく、業務・業界系がないと仕事が出来ないのも事実です。これらの知識や能力も専門能力の分野に分類できます。
仕事をするための能力があっても、必ずしも成果を出せるとは限りません。成果を出すためには、専門能力だけではなくて、遂行力、つまり一般的にはコンピテンシー呼ばれるヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルが必要なのです。 |
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スキル標準導入と人材像の考え方 |
スキル標準を企業に導入する目的は、例外なく企業力・組織力のアップでしょう。個人のスキルアップを促しますが、ゴールは「ビジネス目標達成に貢献する人材の育成」にほかなりません。 そう考えると、いきなり人材やスキルから入ると、企業の目標に合わせていくことが難しくなります。その方法で進めている担当者に、色々質問を投げかけても、うまく説明できないのは、これが主な原因です。
企業や組織が持つべき機能から入るべきであって、この考えで進めると人ではなく機能にスキルを紐付けることになり、はるかに分かりやすいアプローチになります。
人材像とスキルを結びつけるのは、人材像構築の最後の局面です。各人材の役割分担を考え、人材が責任を持つ、もしくは関係する機能を特定し、そのサブセットとなっているスキルを、その人材のスキルセットとするのです。
こうすると、組織力を上げる、そのためにどのような機能を持つべきか、その機能を人材像でどう役割分担するか、さらに人材はどのようなスキルを持つべきか、という具合に導入を進めることが出来ます。 IT系の方なら、このアプローチは容易に理解でき、社員の方にも説明責任を果たせることにもなります。 |
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コンピテンシー(ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル)の扱い |
ここで慣れない推進者の方は、機能にヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルをセットしようとする場合があります。これは、完全に考え違いです。 機能に専門能力をセットすることは可能ですが、遂行能力に当たるコンピテンシーは、人材像に対してセットすべきものです。
(1)機能のサブセットとして、その機能を実現できる専門能力をセットする (2)自社の目標達成に必要な具体的人材像を、人材類型・人材種別などを参考にして設定し役割分担した上で、関係する機能を特定する (3)各人材像が受け持つ機能のサブセットであるスキルセットの総和が、その人材像が持つべきスキルセットとなる。コンピテンシーは、その人材像に必要とされるものを付加する
以上の流れですが、次に、各人材像にスキル標準のキャリアフレームワークのアーキテクチャを使って、レベルを付けていくことになります。そのときの、レベル共通にコンピテンシーを割り当てたり、人材像・レベルの単位で割り当てたりすることが一般的です。 |
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「スキル」と「キャリア」 |
スキル標準の導入検討時に必ず話題になるのが、「スキル」と「キャリア」です。多くの方が企業に属している限り、自身のキャリアは企業から大きな影響を受けます。
ITSS展開の目的のひとつに、人材の流動化を促進するというものもありますが、企業の枠を越えて考えることは、現実的には難しいことでもあります。
さらに企業導入する場合は、スキルアップさせることが一番に来ざるを得ない状態です。なぜなら、キャリアを語れるほど成熟している企業、組織、推進者が少なく、また人事制度的にもうまく連携したものを持っていないという現実があるからです。
理論やあるべき姿ばかり掲げて、現場を見ずに進めてもうまくいくはずもありません。スキル標準はいい内容で理解はできても、やはり、いきなり全てを活用することは難しいのです。
ITSSのような初めての仕組みに出会って、IT企業は右往左往しスキル診断のみに走りました。未だに続けている企業は論外ですが、それもきっかけ作りとしては間違ってはいません。ITSS初期の取り残された企業を除いて、今は次のステージに進んでいます。 |
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登録:2011-12-18 10:31:41
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