スキル標準ユーザー協会で、先回ご紹介した新しいスキル標準モデルに基づいた「導入活用ワークショップ」を実施しています。全6回のコースで、終了後は自社にマッチした人材育成モデルが出来上がるという仕組みになっています。 今回はその中で出たIPA・IT人材白書についての質問を取り上げてみます。
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スキル標準導入活用ワークショップ |
IPAの地域IT人材育成の施策として取り上げられ、名古屋、札幌、新潟で実施したワークショップです。JUASでも何度か実施しましたが、SSUGでは新しいスキル標準モデルをベースとし、最新の内容で実施されています。
表のように、大体週一ペースで進め、最終日にはスキルチェックの結果を使って、各社個別に現状分析結果のフィードバックをします。
参加各社にもそれなりの負担がありますが、自社の人材育成モデルを構築するのですから当然のことです。それぞれ真剣に取り組んでいただいています。 |
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ワークショップ参加企業 |
今まで参加された企業は、大きく2つのパターンに分かれます。一つは、初めて自社に導入することを進められている企業。もう一方は、今まで導入して運用しているが、どうもうまくいっていないと感じ、やり直す必要があると考えられている企業です。
特に後者は、ITSSをほぼそのまま取り入れて、年に1回、もしくは数回のスキル診断をされている場合が多いようです。その結果、経営戦略や事業プランと人材育成の仕組みがうまくリンクせずに、どうしていいか分からず困っているということが多いということです。 会社の考えが入っていないITSSをそのまま使うと、その枠組みの中でのAs Isだけで、きっかけづくりにしかならないのです。 つまり「次のステップがない」ということです。ましてや毎年続けても意味をなさないことは明白です。
担当の方々は、そのことを身をもって理解されているので、すでに導入・運用しているにもかかわらず、このワークショップに参加されるわけです。 |
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ワークショップ・メンバからの質問 |
参加企業は、それぞれ色々な考えや、特有の悩みなどをお持ちなので、当然ながら様々な質問が出てきます。
今まで答えられないことは一つもありませんでしたが、IPAから出ているIT人材白書については、いかんともしがたいことを含んでいます。
例えば、IT人材白書2011の14ページに、このような表が掲載されています。
ITSSをよく理解されている方は、おかしなことに気づくでしょう。 レベル4以上しかないはずのITアーキテクトやPMにもレベル1〜3が設定されて、人数のカウントがされているのです。またレベル7がないはずのITスペシャリストやAPスペシャリストについてもしかりです。
このことで出てくる質問としては、「IPAはレベル設定の考え方をしっかり持っていないのではないか。」や、「全体のデータ解析結果がいいかげんなものになっているのではないか。」ということになります。
これに対する答えは、アンケート結果だから、もしくは統計資料だから、などというものでは到底納得できないでしょう。どのように答えても、結局は重要視していないということにつながってしまいます。
もうひとつの質問というか、参加者の悩みは、「今のままではいけないと思いワークショップに参加して改善しようとしているのに、経営者や責任者がこの表を見て、やはりそのまま使わないとだめなのではないかと言ってくる」ことです。
白書には、いきなり人材数推計結果ということで、この表が登場するので、ITSSが出た2002年当時と同じことが起こってしまうのです。 つまり、キャリアフレームワーク(当時はスキルフレームワーク)を見て、これに合わさないといけないという強迫観念が生まれるのです。 |
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新モデルと白書のギャップ |
新モデルの考え方は最近明らかになったので、白書2011の内容をまとめる期間や公表された時は、存在しなかったわけです。
ですから、内容にギャップがあるのは仕方がないとしても、ITSS V2からしっかりと謳われている「参照モデル」の考え方にも結び付かないのは、掲載の仕方や表現に改善の余地があると言えるでしょう。
ましてや、新モデルは企業ごとに自社モデルを作ることが基本になっていますから、次のIT人材白書2012では、バランスのいい内容として掲載されることを期待します。
どちらもIPAから出ているのですから、整合性がないということはありえないはずです。 |
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▲▽ 関連サイト ▲▽
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・ 新スキル標準モデル
・ IT人材白書2011
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登録:2011-06-26 21:12:21
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