スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第15話:「組込みスキル標準」(ETSS)について
組込み系エンジニアは全国で15万人と言われていますが、待望の「組込みスキル標準」の第1版がリリースされました。「ITスキル標準」と比較しながらその概要をお話しします。
「組込みスキル標準」の構成
クリックすると拡大 IPAから何種類かの資料が出ていますので、目的や経緯は省略しますが、海外勢の攻勢の中、ますますスキルの高いプロフェッショナルを育成する必要性が高まってきました。「ITスキル標準」に続いて組込み系エンジニア向けの共通指標として「組込みスキル標準」がリリースされました。
その構成は以下のようになっています。

・スキル基準(v1.0)
・キャリア基準(Draft)
・教育カリキュラム(Draft)

「スキル基準」は、組込みソフトウェア開発スキルを体系的にまとめたもの、「キャリア基準」は、組込みソフトウェア開発に関る職種名称や職掌を定義したもの、「教育カリキュラム」は、組込みソフトウェア開発に関する人材育成を目的にまとめられたものと、定義されています。
「スキル基準」(v1.0)だけが正式版で、以外はドラフトとなっています。
「ITスキル標準」リリース時の分かり難かった構成や考え方の説明の仕方が、大幅に改善されています。
「ITスキル標準」の11職種38専門分野で表現されている一般的には「ITSSフレームワーク」と呼ばれているものが、ここでは「キャリア基準」になっています。しかも第1版はドラフトです。「ITスキル標準」が、このフレームワークばかり目だって多くの方が誤解してしまったり、ガイドも適切でなかった部分が、ここでは明快にポジショニングされて大変分かりやすくなっています。
「スキル基準」
クリックすると拡大 「スキル基準」だけが、v1.0の正式版としてリリースされています。
「ITスキル標準」に照らし合わせてみると、この「スキル基準」は「スキル領域」に当たります。私が、コラムの中でも何度も何度も言い続けてきた「重要なのはスキル領域」であり、全てのスキル定義がユニークな形で管理できるのは、ここしかありません。最新状態にして維持管理していくのは、この部分を使うほか無いのです。この「スキル領域」に当たる「スキル基準」を先に正式版として出されたのは、さすがに技術者の集まりで検討された結果だと思います。
「スキル基準」はさらに以下の3つのカテゴリで構成されています。
・技術要素
・開発技術
・管理技術
組込みシステム製品を開発する際に「技術要素」を構成要素として、「開発技術」を用いて開発を行い、「管理技術」を駆使して開発プロジェクトを管理する、と定義されています。つまりソフトウェア開発のための技術とそれを使う技術、また開発工程を効率的・効果的に進めるための管理能力を定義しているということになります。
当然の内容ですが、大変分かりやすくシンプルな構成になっています。
このスキル定義の階層は3階層になっており、「ITスキル標準」とほぼ同等になっています。さらに必要であれば詳細に下位展開しても構わないことになっています。この辺りも「ITスキル標準」では不明確になっていましたが、使う側のことを考え、明確にしています。
それぞれのスキル定義項目ごとに対応するスキルレベルは、以下のようになっています。
・レベル1 初級 上位者の指導の下に実施ができる
・レベル2 中級 上位者の指導が無くとも自立的に実施できる
・レベル3 上級 下位の技術者の指導ができる
・レベル4 最上級 経験を体系化し先進的なやり方を工夫・開発できる
「ITスキル標準」に関しては、ここも明確に定義されているわけではありませんが、私も委員で参画していましたMeti主催の「スキル評価ガイドライン委員会」で決まったものを適用するのが現実的です。このスキル定義項目ごとのレベルを「レベル」と呼ぶと職種専門分野ごとの1〜7のレベルと紛らわしいので、ランクと呼ぶことにしました。
・ランク1 上位者の指導の下に実施ができる
・ランク2 ほぼ独力で実施できるが難易度の高いものは上位者の指導が必要
・ランク3 何でも独力でできる
・ランク4 下位の技術者の指導・育成ができる
それぞれ同様に4段階に分かれています。内容は若干違いますが、それぞれ定義が明確なので対応付けは可能であり、さほどの問題は無いと考えています。
「キャリア基準」
クリックすると拡大 9職種12専門分野で構成されています。第1版はドラフトであり、この部分ばかりが目立った「ITスキル標準」とは一線を画した形になっています。これはあくまで「標準的な見方」なのであって、最重要なのは「スキル基準」だというメッセージです。「スキル基準」は、「ITスキル標準」では「スキル領域」に当たりますが、殆どの方がそれに注目していません。また「スキル領域」を主体にして作成された資料もありません。ITSSユーザー協会が作成し、昨年1年間実証実験を重ねたものが、私の知る限り唯一のものです。
また、「キャリア基準」は組込みソフトウェア開発に関る職種名称や職掌を定義したもの、と明確に定義されています。ここで注目したいのは「職掌」です。これは一般的には役割の定義になります。「ITスキル標準」では「役割や人材像を定義したものではない」ことがはっきりと示されています。なぜなら「辞書」だからです。この辺りが「ITスキル標準」を分かり難くしている一つの原因であると思っていますが、「キャリア基準」では、明確に「役割」の定義がされていて分かりやすくなっています。これはSFIAの考え方と同じです。
今後の行方は?
「ITスキル標準」と「組込みスキル標準」が、並列で存在することになってしまいました。両方のキャリアフレームワークを見ると、職種・専門分野の数は異なりますが、レベルはそれぞれ1〜7に設定されています。
スキル定義項目を見ていくと、上流の部分やプロジェクト管理の部分が、同じ内容を異なるカテゴリ方法で、表現もさほど共通性がなく記述されています。
私が今できることは、このように事実を淡々と述べるだけですが、ITエリアにいるエンジニアにとっての技術は、このように分割して定義されるものではなく、統合された中での選択肢とできるなら素晴らしいと思います。IT関連企業や組織、そしてエンジニア個人にとって、今まで無かった指標がもう一つ登場したわけです。ポジティブに捉えて、使う側が良くしていくことを、是非考えたいと思います。
登録:2011-01-30 15:34:46
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