スキル標準の企業導入は、その検討のきっかけやステークホルダーが誰かによって、様々なハードルが出現します。それらは、途中で検討をあきらめなければならないほど、導入推進者にとっては大きなインパクトがあります。 3回目は、最も多いケースである人材育成・開発担当者から話を通していく場合を取り上げます。
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企業導入を検討するきっかけ |
検討スタートのきっかけをまとめると次の4点になります。
@経営者、経営層、責任者などが、人材育成の仕組みづくりのために、スキル標準の導入を指示した場合
A経営者、経営層、責任者などが、スキル標準については明言せず、人材育成に力を入れるという方針を出している場合
B現場サイドから声が上がり、人材育成に関する改善策の具体化に迫られた場合
C人材育成担当自身が、現状から人材育成策強化の必要性を感じ、具体化しようとした場合
@、Aは典型的なトップダウンで、導入意義の共有や社内統制などは整っている場合が多く、比較的スムーズに導入を進めることができる環境だとお話ししました。
もちろん、社内に向けて浸透させるために、推進者の使命感の強さやリーダシップが必要なことは言うまでもありません。
少し状況が異なるBやCは。@、Aに比べて越えなければならないハードルが高くて多いと言えるでしょう。
Bの場合は、声を上げた現場の方と育成担当者の経験の違いや、現場の方の理解不足から起こる問題について話しました。
今回は最も多いと考えられるCのケースを取り上げてみます。 |
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人材育成担当自身が、現状から人材育成策強化の必要性を感じ、具体化しようとした場合 |
今までスキル標準の企業導入・活用をテーマとした数多くのセミナーやワークショップを担当してきました。対象者は、ユーザー企業情報システム部門、情報システム会社からIT企業まで様々です。
参加された皆さんは、スキル標準の導入を検討しているか、もしくは自力で導入を進めようとしている方々がほとんどです。 いろいろ課題を抱えているという状況の中、一番多いのが人材育成・開発担当者から必要に駆られて、スキル標準導入を検討するというパターンです。
なぜそうだと分かるかというと、皆さん一様に「責任者や経営層を説得するいい資料はないでしょうか」といった質問をするからです。 |
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経営層へのアプローチ |
人材育成策を強化しないといけないと切実に感じている原因は、企画力の(あえて)無さ、技術力の低さ、人間力の問題と広がってしまいますが、現場経験が長い育成担当者の方ほど現状に悲観する傾向があります。
経営層が同じ意識を共有している場合は、トップダウンに近いアプローチをとりやすいものですが、案外「何がうまくいっていないのか」と将来的な問題と捉えずに、とりあえず現状はそれなりに回っていると考えている経営層が多いのに驚きます。
多くのケースを目にしてきましたが、このように考える経営層は、自分の任期の間は問題を起こしたくないという「事なかれ主義」の典型です。担当の方が懸命に考えた人材育成強化策を、何のメリットがあるのか、なぜこの方法なんだなどと、難癖をつけるような場合も同じです。これは実現を支援するためではなく、自身の立場だけを考えた大変偏った対応です。
できあがってしまっている経営層の方の考えを変えるのは、並大抵ではありません。直属の役員がこのような状況だと、一見なすすべがないように見えます。 しかし、先にも述べていますが、同じ経営層でも企業の将来を考え、人材育成の重要性を十分認識されている方が必ずいるものです。それは社長かもしれませんが、自分の保身を優先してとりあえず言うことを聞いておくか、それとも勇気を持って理解してくれる経営層の方にアピールするかは、担当者の方の姿勢や使命感によるものと考えます。 |
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現場管理層へのアプローチ |
人材育成部門や担当者から必要性を訴えていくことになりますが、現場から上がってきた声に応えたわけでもないので、現場の管理職の方々が一番手強い抵抗勢力となる場合が多いと言えます。
なぜなら、管理職の方々のミッションの一つは、「部下に仕事をさせること」だからです。通常暇な部署はなく、日々の仕事で手いっぱいという状態の中、人材育成のためのスキルチェックやスキル管理など、また極端に言うとトレーニングの受講までも、現場管理者にとっては優先順位が低くなる対象となります。
最近は、1人当たりの年間のスチューデントデイズを決めて、達成度が本人と管理職の評価の一部となる仕組みを作っている企業もありますが、よしあしは別として強制力としてルール化しているところは、まだまだ少ないと言えます。
そうすると、管理職の口から出るのは、「それでなくとも忙しいのに、部下にそんなことをさせるわけにはいかない」、「どんなメリットがあるのか」などと、否定的なものになるわけです。
管理職の方のミッションには、経営計画や事業計画を受けて、自部門の実行計画を立て、回していくということも大きな役割になります。 しかしながら、筆者の知る限り、こと人材に関して自部門の事業計画として論理的に落せているケースは、ほとんどまれと言わざるを得ません。
言い換えれば、計画を成し遂げるのは人材であるのに、そのための能力の過不足について、ほとんど言及されていないということです。パートナーとの役割分担や、自社のコアコンピタンスなども明確ではありません。
以上のことを見える化することや、それらを活用した計画立案方法を具体的に管理職の方に示すことができると、考え方が変わってきます。つまり管理職の方に「武器」を与えるのです。
人材育成自体は手段ですが、人材育成部門が考える方法は、育成を目的としたHowの場合が多いと言えます。育成の成果はすぐには出ないこともあり、これでは負担を強いるだけで、メリットがないと感じるのは無理もないことです。
たとえば、ある人材のレベルを一つ上げることと、管理職の方の来年度の事業目標達成のための施策が合うはずもなく、これはこれという別の話になりかねないのです。
管理職の方々を味方にするには、次の策を進める必要があります。
・組織力のTo BeとAs Isを見える化する手段と、そのギャップからの計画立案方法を具体的にガイドする ・管理職が策定した計画のドキュメントなどに活用することなど、仕組みを使ったPDCAをルール化する ・人材育成を管理職のミッションと明確に位置づける 可能ならば評価項目とする ・管理職の目標達成とメンバの育成指導をシンクロさせる方法を提供する
〜次回からは、導入後の活用における課題について話を進めます。 |
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登録:2010-12-01 15:06:05
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