『キャリアフレームワーク上のどの位置に何人いるかを「As Is」、将来のためにどの位置に何人いるべきかを「To Be」、その差を埋めるために人材育成計画を立て実践する。』 このように考えていませんか?これでは全くの片手落ちです。
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1つ目のハードル:経営戦略や事業計画を基に、スキル標準を導入する/ITSS |
特にITSSの場合、「経営戦略や事業計画を基に、スキル標準を導入する」という命題について、チャレンジした企業が長らく解決策を見出せずに時間が経ってしまいました。 その結果、出来合いのスキル診断を実施し、キャリアフレームワークのどこに何人いるということを、毎年続けているという企業がいまだに存在します。 IPAから「活用の手引き」が公開されて、個人視点の定義の塊りをどのように企業視点に捉え直すか、またそれら企業の考え方にあわせて、提供物を自社用のしくみ構築のために、いかに参照するかが明確になりました。
しかし、理解不足とは言え、一度いいと思ってはじめた取り組みは、ちょっとやそっとで変えることはできません。(一部の勇気ある企業を除き) はじめた推進者、担当者、担当部署の責任が問われかねないからです。多くの場合、ツールを使ったりExcelを駆使してスキル診断をし、その結果からトレーニングに結びつけるという単純なものですが、いかんせん企業の考えが入っておらず、提供物をそのまま使っているケースがほとんどです。
そのような場合は、いくら活用の手引きが公開されても、読みもしない、読む人がいない、言い換えると運用している部署や人は存在するが、仕組みの改善を考えるような本来の意味の責任者が不在、という状況であると考えられます。
また、ITスキルのことなので、導入から活用に至るまで、自分たちですべてやり通せないとおかしいと、考える経営者が多いことも事実です。体系的な人材育成の経験に乏しい推進者が、せっぱつまって安易な方向に走るのも致し方ない面があると言えます。 |
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1つ目のハードル:人材育成の仕組み構築の優先度/UISS |
ITSSも同様のことが言えますが、UISSの場合、特に顕著なのが、現状が不備にも関らず人材育成の仕組みを改善するための具現化作業に入れないということがあります。 理由は、IT部門の要員数がギリギリで運営している中で、時間的余裕がないという現実があることです。リスク管理やセキュリティ管理の厳格化が要求される中で、IT要員の負担は相当なものになっています。しかし、コスト面からも人員増はできず、アウトソースを利用する傾向にあり、その管理でまた時間を使う、という悪循環に入っています。 このような中で、IT部門の意志だけでは人材育成の仕組み改善の優先度を上げるには、かなり厳しいものがあると言わざるを得ません。 経営者や経営層がビジネスを進める上で、競合他社に勝ち抜く武器としてITを捉えているか、もしくは人がやるよりコンピュータの方が安くて正確だという、単にコストや効率化だけでとらえているかによっても大きく異なります。 日本の現況は、残念ながら後者であると多くの指標が指し示しています。 |
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2つ目のハードル:企業視点で人材育成を捉える |
次に立ちはだかる壁は、運用におけるベストプラクティスは何か、どうすればうまくいくか、ということです。
誰に対しても、キャリアフレームワークがあまりにも印象に残るため、どうしてもこの職種(UISSでは人材像)のレベルいくつに何人、という見方が先行してしまいます。 検討の末、自社向けにいくらうまくキャリアフレームワークを策定したとしても、「レベルを1つ上げるために何をするか」という事だけしか頭に浮かんできません。それで、経営戦略や事業計画とどう結びつけることができるのでしょうか。
事業計画は経営層や幹部で立てることになるでしょうが、それを実践していくのは現場メンバです。一般的には、その中の管理者が人材育成も受け持つことになりますが、その管理者が、前述の話だけでメンバをうまくガイドしていけるでしょうか。
レベルを1つ上げるには、年単位の努力が必要なわけで、それを習得能力に落として細かく見ていっても、事業計画と結びつけるのは至難の業です。事業計画ではなく、職種(人材像)・レベルという別の観点が主体となってしまうからです。
それを解決するのは管理者のミッションだからと言って片付けてしまうのは、あまりにも無謀だと言えます。 |
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職種・人材視点より重要なタスク視点 |
では、どのように見ればいいのでしょうか。 メンバ一人ひとりからすると、職種や人材の方が分かりやすく、レベルを上げることや他の職種・人材像に移るということで、キャリアパスの見える化も可能です。
しかし、これはあくまでも個人視点です。企業で活用するには企業視点で見なければなりません。
先の現場管理者からすると、責任のある事業エリアで、部下の仕事をする総力をつかむ必要があります。また育成計画を立てるにも、事業計画からどのくらいの仕事をする力が必要かを、目標として明らかにすることが必要です。 目標をTo Be、現状の仕事力の総和をAs Is、そのギャップを埋めるのが育成計画で、その立案・遂行責任は現場管理者にある、と言うのなら納得できるものとなります。
図は、タスク単位に仕事力の総和が見れる「タスクフレームワーク」です。 図では、関係するメンバ全員の能力の総和で見ていますが、これをメンバ一人の能力だけで見れば、管理者の指導しやすさが格段に向上するのは、言うまでもありません。 |
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登録:2010-05-28 11:16:13
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