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コラム
第145話:ITSSのポリシー/スキル・達成度のマジック 〜最新版「ITスキル標準 概説書」 の読み解き
 概説書最新版の読み解きの4回目です。
2002年12月発行のITスキル標準v1.0で示されたポリシー
クリックすると拡大  原点に帰って再度見つめなおすことは、とても大事なことだと思います。

 筆者は、7年間スキル標準に携わっていますが、企業導入を進めていると、時間の流れの中で基本的なポリシーを忘れそうになる時があります。その時の関心事などで知らないうちに偏ってしまい、バランスが悪くなるという感覚です。
 そういった時に、必ず読み返すのが2002年12月に公表されたITスキルスタンダード協議会のアウトプット、つまり「ITスキル標準v1.0の概要編」(最下部にURL)です。

 かなりの時間を費やして議論されており、優れた考え方、ポリシーが定義されています。

 <以下、ITスキル標準v1.0より抜粋>

●スキルフレームワーク(現キャリアフレームワーク)設定の考え方
 ・ITサービスを「職種/専門分野」として区分
 ・職種/専門分野毎に、スキルを客観的に観察する指標として、経験・実績を記述した「達成度指標」を設定
 ・職種/専門分野に必要なスキルを教育・訓練に活用する観点から要素分解した「スキル項目」を整理し、スキル項目毎に修熟の度合いを示す「スキル熟達度」と必要な「知識項目」を展開
 ・以上に加えて、これらの全体像を一覧性をもって提示するものとして「スキル・フレームワーク」を作成

●職種/専門分野の考え方
 職種/専門分野は、実際のITサービスの種別を反映する形で区分している。また、「辞書」として機能しやすくするために、それぞれの区分において必要なスキルを独立して参照可能なように規定している。
 
 職種/専門分野はいわゆる人材像ではない。このようなスキル標準を作成する際の考え方としては、人材像として一定の役割や職務をモデル化し、それぞれのモデルに求められるスキルを導き出すアプローチもあり得る。しかしながら、本スキル標準は、辞書としての活用性を高める観点から、固定的な役割や職務のモデル化をまず行うのではなく、市場において顧客が必要とするスキルをまず浮き彫りにしてそのスキルの標準化を行い、市場のめまぐるしい変化に応じて企業や関係者の対応が柔軟かつ大胆に行われることを確保しようとしたものである。

 もっとも、本スキル標準では、人材像として複数の職種/専門分野をまたがる役割を持つモデルを否定するものではない。人材像については、企業の事業戦略や教育機関の教育方針に従って、柔軟に形作られるべきものと整理したものである。

●レベルの概念
 レベルは、当該職種/専門分野においてプロフェッショナルとして価値を創出するために必要なスキルの度合いを表現している。また、キャリアパスを明確にするために、7段階のレベルを設けている。
考え方の骨子
 先述の通り、大変優れたポリシ−であり、以下の基本思想が貫かれていて、大変分かりやすいものです。

・職種/専門分野はいわゆる人材像ではない

・人材像については、企業の事業戦略や教育機関の教育方針に従って、柔軟に形作られるべきもの

・レベルは、当該職種/専門分野においてプロフェッショナルとして価値を創出するために必要なスキルの度合いを表現

・スキルを客観的に観察する指標として、経験・実績を記述した「達成度指標」を設定

 つまり、職種/専門分野は人材像や役割ではなく、IT人材のタスクをベースに分類したものであり、人材像は活用する企業側で作るということが、当初から明確に謳われています。

 また、7段階のレベルは必要なスキルを表現しており、達成度指標はスキルを客観的に第3者が評価するために設定されているということです。
現実感のある解釈
 スキル標準を企業導入するケースを考えると、スキル診断をしたことがあるくらいで、ほとんどの企業が初めての取り組みとなります。

 また、どうすればスムーズに導入が果せるか、またその後活用のサイクルを廻していくにはどうすればいいかを、あらかじめ考えておくことが重要です。

 スキル標準の導入とその後の活用、どちらも大事ですが、手順からは導入作業からスタートすることになります。活用していくための育成計画、運用計画などは、導入作業と並行して考えることになるでしょう。

 導入作業を進める場合、先述の基本思想を頭において考えるということと、PDCAを意識することで、おのずと流れが明らかになります。
 IPA発行の「活用の手引き」には、進め方が明確に記載されています。

 PDCAを基本に考えると、まずPlanを策定することを中心に検討する必要があります。
Planとは仮説であり、以降で実施・検証、Replanという流れとなります。

 目標とする人材像をスキルセットで表現し、事業を進めるために必要なスキルを持った人材(To Be)の設定と、現状(As IS)の見える化をし、そのギャップから育成プラン(仮説)を立てる。この流れが「活用の手引き」で示されています。

 人材育成計画にはトレーニング計画だけではなく、OJTのためのジョブアサインなど、現場での仕事に伴う要素が含まれます。

 仕事をすれば成果が出る、それを達成度指標の考えで評価し、検証するという流れです。つまり、これはスキル標準導入後の活用時点のプロセス設計(上司や第3者との評価プロセスなど)に大きく依存します。

 よく導入経験がなくスキル標準の表面的なことに固執している方が、達成度でレベルが決まるという発言をしますが、これだけだと方法論が伴わない大変抽象的な話であり、実質はこのプロセス設計と評価指標の設計こそが、活用時点での「肝」になることは間違いありません。

 このように、導入時の進め方と活用時の考え方として「スキル」と「達成度」を捉える必要があります。
 スキル標準の基本思想として貫かれていることでもあり、考え方としてしっかり理解しておく必要があります。

 重要なのは、現実的で分かりやすい方法で企業導入を果し、その仕組みを使って活用のPDCAを廻すということであり、理論ではなくこれらの方法を具体的に考えることが必要だということです。
▲▽ 関連サイト ▲▽
ITスキル標準v1.0概要(2002年12月公表)
登録:2009-07-12 12:32:05
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