スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第110話:12月にたて続けに開催されたスキル標準(ITSS、UISS)/人材育成関連のセミナーについて
 12月はどこもセミナーラッシュです。スキル標準関係についても、かなりの濃度のものが開催されています。今回は上旬に開催された3つのセミナーに関してレポートします。
12月7日(金) 日経コンピュータ主催「IT人材セミナー」
 当日のプログラムは次の通りです。

◆基調講演 13:00〜13:40
企業が抱えるIT人材問題と、その解決法
〜事例から見る、スキルの見える化、キャリアパス策定、育成の実施法〜
   スキルスタンダード研究所 代表取締役 高橋 秀典
◆事例講演1 13:40〜14:25
適切なベンダー・マネジメントに向けた人材育成
〜モノ作りの能力を再評価し、研修を実施〜
   KDDI 情報システム本部 システム企画部 標準化推進グループリーダー 引地 信寛 氏
◆事例講演2 14:40〜15:25
企画力強化に向けた人材育成
〜企画提案の推進者育成に向けた“道場”の実践〜
   富士フイルムコンピューターシステム 業務部 人材開発グループ 担当部長 山田 隆幸 氏
◆事例講演3 15:35〜16:20
現場ローテーションを軸にしたITリーダー育成
〜システムライフサイクル全体を理解し、事業プロセス改善をリードする人材を育てる〜
   日本ゼネラル・エレクトリック コーポレート人事部 eHRマネージャー 河野 裕子 氏
◆質疑応答を兼ねたパネルディスカッション 16:35〜17:30
   [モデレータ]日経コンピュータ副編集長 森側 真一氏

 KDDI・引地氏はUISS普及啓発WGの主査でもあり、筆者と東京電力・沼田氏で「UISSガイドブック」を執筆した関係ですので、UISSについての考え方に詳しく、社内でうまく展開されつつあるのを確認した内容でした。
 富士フィルムコンピュータシステム・山田氏の講演内容については、日経コンピュータに掲載されていたくらいしか予備知識が無く、初めて詳しくお聞きしました。スキル標準とは関係なく人材の育成に正面から取組んでおられ、なつかしのPrideを応用した考え方で、企業の方針や計画をうまく表現され、社員に正確に伝えて認識させることができるすばらしい取り組みです。スキル標準については、あまり突っ込んで検討されてはいないようで、ITSSのスキル診断をされるにとどまっています。それまでの内容が良かった分つながりが無くなり、もうひと工夫が必要のようです。説明されたご本人も、その点については満足されていないご様子でした。
 日本ゼネラルエレクトロニック・河野氏は、社内のリーダー育成の仕組みを詳しく話され、日本企業には無い明確で論理的な仕組みに、久々に出会った感じがしました。外資系のいいところが詰まったいい内容でした。スキル標準については、ほとんど取り入れておられなくて、今後の課題といったところでしょうか。
 パネルディスカッションでは高度な質問も多く、かなり深く検討されている企業も多いことを感じました。一方でITSS V3が来年3月に発表されることについて、「常に変更されていくものに、いつまでついていけばいいのか」といったような不安の声も聞かれました。今までもそうですが、ITSSに関するメッセージアウトが十分でなく、結果的に色々不安をあおる形になってしまうようです。今後の課題として策定側に十分意識して欲しいところです。
12月11日(火) JUAS主催「UISS導入推進者向けワークショップ」
 これはあまり一般には公開されていないワークショップです。JUASの会員企業で、これからまさにUISSを導入しようと検討中の企業の推進者に向けての3時間コースです。JUASの普及啓発ワーキンググループが、UISS普及のために「有効活用ガイドブック」作成の次に取組んだもので、筆者がコーディネータを務めています。
 参加企業に対して事前アンケートを実施し、その内容によってワークショップの構成や流れを作っていく形式です。今回は5社の企業が参加され、具体的な導入手順の理解や、検討中に疑問に思ったことをぶつけ合う内容となりました。
 ITSSUGでも導入推進者トレーニングを実施していますが4日間と長く、ITSS概要、人事概要、調達概要など一般論を3日間でインプットして、最後の1日で具体的な導入手順を理解するというものです。今回の場合は一般論は極力省き、純粋な導入の手順や実際の作業、かならずぶつかる問題点など具体的で現実的な内容になっています。
 それでも3時間は短くあっという間でしたが、UISSを導入される皆さんにとっては有効なものになっています。
12月12日(水) ITSSユーザー協会主催 「ITSSユーザーズカンファレンス2008」
 毎年12月に開催されるこのイベントでは、今回いくつかのポイントが挙げられます。

@経済産業省が主体で進めているキャリアスキルフレームワークとITSS、UISS、ETSSの関係、及び情報処理技術者試験との関係

AITSS V3の基本方針の発表
 改訂内容、及び情報処理試験との関係付け

BITSS、UISS、ETSSそれぞれの活用事例の充実

CITSSユーザー協会が、ITSSだけではなくUISS、ETSSの活用も視野に入れる形で、来年よりスキル標準ユーザー協会に名称変更

 @はコラム「第106話:ITSS V3、UISSの方向性と情報処理試験との関係」で詳しく述べています。3つのスキル標準が統合されたキャリアスキルフレームワークは、情報処理試験の資格をどういう順序で取得していけば、スキルが上がり高度IT人材に近づくことができるのかという道筋を明確にしているのです。そのために、3つのスキル標準すべてがそのベースになければ意味がないので、統合した上で情報処理試験の資格を職種・専門分野と関連付けているわけです。つまり、キャリアフレームワークそのものは、IT業界の高度IT人材育成のための枠組みであって、企業内でキャリアパス策定や人材育成のために、直接的に活用するものではないということです。

 Aについても「第108話:ITSS V3と新・情報処理技術者試験の対応について」で詳しく述べていますが、会場でも賛否両論を呼びました。ITSSキャリアフレームワークのレベルと情報処理試験を1対1で対応させることについては、色々な意見があります。賛成でも反対でも思い入れがあるからこそで、それだけスキル標準にかかわる皆さんが真剣だということだと思います。筆者は今までには無い活発な姿に、IT業界も捨てたものではないと、一人喜んでいました。

 Bは、全日空、プロミス、インフォセンスとUISS+ITSSでの導入を果たされた企業が、それぞれ事例発表をされました。昨年の事例は一昨年の事例より充実していましたが、今回のものは昨年よりもさらに充実した内容になっていたと、評判が高い内容になりました。筆者が午前中の専務理事として主催者講演の中で、

「ITサービス企業も、ユーザー企業も、導入プロセスはUISS提供のものを使い、定義体はUISS+ITSSを使うのが最適」

 と話しましたが、それぞれの企業がまさに実践された内容になっていました。

 Cは、左記の通り各企業はUISS、ITSS、ETSSの使えるところをうまく使っていくということで、ITSSユーザー協会もその流れに合わせて範囲を広げていくことになったのは必然だといえるでしょう。
 
▲▽ 関連サイト ▲▽
第106話:ITSS V3、UISSの方向性と情報処理試験との関係
第108話:ITSS V3と新・情報処理技術者試験の対応について
UISS初めての著書「UISSガイドブック」について
登録:2011-01-30 15:57:12
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