IPAからの発表によるとITSS V3は2008年3月リリース予定ですが、それを目前にして今まで数年間ITSSを導入・運用されてきたいくつかの企業が、取組み自体を見直す動きをし始めました。真剣であればあるほど、見えてくるものがあります。
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ITSS V3リリースを前に考えておくこと |
現在も何件か困り果てたITサービス企業から相談がありますが、ITSSに真剣に取組めば取り組むほど当初の誤解や理解不足がクローズアップされてきます。逆にあまり力を入れていない企業は、とりあえずエンジニアのマッピングをやってみて、それで終わっているか、もしくは同じことを毎年意味も無く繰り返しているかというケースが多いようです。 真剣な企業にとっては、ITSS導入といってもITSS自体は部品に過ぎず、導入作業中の1、2ヶ月でITSSという言葉は出なくなるのが一般的です。 ITSS V3リリースを間近に控えて、取組み自体を見直すいいチャンスだと思います。そのとき、次の内容を明確に頭に入れておくことが重要です。
・ITSSは顧客にサービスを提供できるかどうかの視点のみで定義されている。 よって、「顧客の戦略を理解する」など、あくまで外向けの定義されているが、自社の事業戦略策定や方向性については、ITSSそのものでは表現できない。 ・ITSSキャリアフレームワークは、企業間やIT業界内での比較・検討、もしくは人材調達に使用するものであり、自社のビジネスモデルやビジネス目標にあったフレームワークを設定する必要がある。 人材育成観点では、ITSSキャリアフレームワークは目安としての位置づけとなる。 ・自社のフレームワークを策定するには、ITスキル標準センターが推奨(以下)している通り、ビジネス形態にあった形に見直す必要があり、範囲外のコンピテンシーなども自社の考えに合わせて追加していく必要がある。 |
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IPA発行 ITSS V2概要編からの抜粋 1 |
IPAから提供されているITSS V2の概要編の約90ページは、大変よくできています。こにはっきりと書かれていることを、このタイミングでもう一度しっかりと理解しなおす必要があります。
@「企業によってビジネス戦略が異なる以上、投資すべき対象職種も異なる。このため、ITスキル標準を企業へ適用する場合には、ITスキル標準の定義内容は共通指標として活用し、自社のビジネス戦略に合わせて企業固有の定義内容に置き換えた指標を設定することが求められる。」 |
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IPA発行 ITSS V2概要編からの抜粋 2 |
A「各企業は、ITスキル標準を共通指標として現場で特定できるレベルで解釈あるいは再定義し、企業固有の指標として適用する。これにより、企業間の解釈による差異を少なくすることができる。」 |
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IPA発行 ITSS V2概要編からの抜粋 3 |
B「ITスキル標準は、事業活動における個人の貢献を的確に評価しようとする観点から活用することが必要である。人材投資という経営判断やビジネス戦略が伴わないままITSSを導入することは、自社のビジネスや技術を担い、競争力を支えていくプロフェッショナルの重点育成策にはつながらない。ビジネス戦略に乏しく、単に人事管理上の便宜性や処遇制度の見直しのために利用するだけでは、逆に個人のモチベーション低下につながる恐れもある。」
C「ITスキル標準の位置づけは、基準や仕様ではなく、参照モデルである。すなわち各社がビジネス戦略の実現を目的に、人材の育成に関わる様々な立場の人が人材育成について共通の認識を持つために参照する指標ということである。「標準」といっても、自社のビジネス戦略の実現に必要な部分だけを参照すればよいのである。」 |
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勇気を持って取り組みの見直しを! |
これらからキーワードを抜き出すと次のようになります。
・「共通指標」 ・「参照モデル」 ・「ビジネス戦略に合わせて企業固有に再定義」 ・「すべてを必ず使う、そのまま使うという位置づけにはない」
このタイミングは、今までの取組みについての是非を見直すいいきっかけになります。改善する、もしくは根本から考え直すのは、企業として勇気の必要なことですが、実際に数年続けたことを、当初のITSSの理解不足や誤解から見直すと宣言された企業もいくつか出始めました。すばらしいリーダシップを持った評価すべき企業です。 人材育成は難しいし一筋縄ではいきませんが、その中でITSSという有力な武器を生かすも殺すも、経営者や推進者の方の考え次第です。
ITSS V3は来年3月にリリースされますが、このコラムでもその内容を詳しく追っていき、ITSSだけではなくUISSについて及ぼす影響なども含めて、皆さんに最新情報をご提供していきます。 |
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登録:2011-01-30 15:56:25
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