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コラム
第95話:IT情報誌記者から見たITSS/UISS
 IT情報誌などでは、しばらくITSSについての具体的な記事が無かった時期がありました。ところが、昨年前半にITSS V2やUISSがリリースされ、時期を同じくしていいタイミングで、人材関係の話がニュースとして掲載されたり、特集の中でさりげなく取り上げられたりで、その頻度も上がってきたようです。
 IT関係の仕事をされている方々が状況を知るには、このようなIT情報誌などでの記事を読むか、我々が提供しているこういったサイトを探し出して情報を見つけるくらいしかありません。記者の方々の話を通じて、各企業がITSSやUISSについてどのように捉えているか、私なりの見方を書いてみたいと思います。

最近の記事
 最近のIT情報誌などに取り上げられた人材についてや、ITSS/UISS関連の記事を拾ってみると、次のようになります。

・日経ビジネス2006年10月2日号 特集(P26)
 「人材沈没」と題して、企業の人材育成に対する考えや実態を浮き彫りにしています。
・日経ビジネス2006年11月6日号 特集(P26)
 「管理職が壊れる」と題して、組織力の低下や管理者の実態について」取り上げています。
・日経コンピュータ2006年12月25日号 特集(P39)
 特集「もっとわくわくしたい」でITサービス企業を取り上げ、エンジニアの意識を浮き彫りにしています。
・日経コンピュータ2007年3月5日号 ニュース&トレンド(P15)
 「採用が進むユーザースキル標準」と題してヤンセンファーマ、KDDI、ソニー生命、リクルートなどのいち早い取組みが紹介されています。
・日経ビジネス2007年4月2日号 特集(P30)
 「抜け殻正社員」と題して、派遣ビジネス好調の中、正社員の実態について掘り下げています。特にIT関係についての問題は的を得たものとなっています。
・日経コンピュータ2007年4月2日号 特集(P38)
 特集「できるIT企画人材の鍛え方」でIT企画力の重要さを取り上げ、ヤンセンファーマやリクルートなどを紹介しています。
・日経コンピュータ2007年4月2日号 IT戦略強化の決め手(P166)
 「ファイザーIT部門の生産性を五つのKPIで分析」と題して、品質強化と評価に対する取組みを紹介しています。
・アスキービジネス2007年5月号 Hot World Cool World(P5)
 「すべての企業を支える新たな視点 UISS」と題して、その背景や特徴などが掲載されています。
記事の傾向
 これらを眺めてみますと、時系列に最初は人材や企業の実態、問題について大きく取り上げられているのが分かります。次にITサービス企業にフォーカスして、さらに突っ込んだ実態や問題点を浮き彫りにしています。その後視点をユーザー企業に切り替え、ユーザー企業のIT部門という観点で、必要な人材、必要な能力、課題、育成方策などにそれぞれ掘り下げた上、実例とともに明らかにしていく流れとなっています。
 言い方を変えると、

  人材の危機全般 → ITサービス企業の課題と対策/ITSS → ユーザー企業の課題と対策/UISS
 
 という流れであるとも言えます。また、後半に登場するのは、ファーザー、リクルート、ヤンセンファーマなどおなじみの企業です。ファイザーとリクルートは、まだUISSの無かった時期にITSSを駆使して当時からUISSの考え方で、人材育成や能力開発、評価などにうまく適用された企業で、ヤンセンファーマはUISSリリースと並行してうまく活用されている企業です。この3社は弊社のコンサルティングを受けられています。各社ともに、経営戦略から入りファンクション、スキルセット構築と、トップダウンで進められています。
ボヤケた状況
 ITSSに取組みITSSユーザー協会で普及活動を始めた頃から、ITSS活用について言い続けていることがあります。

「活用の目的を明確にする」
・ビジネス目標達成に貢献する人材の育成なのか
・調達、企業間比較なのか
・エンジニア個人にキャリアデザインができる環境を提供したいのか

 つい先日、IT情報誌の記者に取材を受けましたが、過去に何度もショックを受けてきた内容が、まだ続いているのを実感し愕然としました。
 それはこういう内容です。記者がITSSを導入しているというITサービス企業に出かけて話を聞くと、どの企業も印を押したように、社員がITSSキャリアフレームワークの中のどこに位置づくかマッピングしているだけだというのです。
 もちろん、自社のバリューを明確にすることは重要です。しかしこれは、上記目的の「企業間比較」そのものにほかなりません。それなのに、経営者や導入責任者に話を聞くと、活用目的は人材育成だと言われます。これも目的ではなくて手段であり、その上のビジネス目標を達成することに貢献するというのが目的です。それは置いておいても、自社の経営戦略に基づいた人材モデルを設定していない限り、現状把握だけしてもそれで終わってしまうのは当然のことです。To-Beが無いのにAs-Isとのギャップは出ないということです。
 また、To-Beは、自社の役割や人材像がピッタリとITSSと合っていない限り、ITSSのキャリアフレームワーク上の上位レベルではありません。同じコンサルという呼び名であっても、各社のビジネスモデル、得意分野、位置づけなどで、その役割や責任範囲、スキルセットが異なるのは当たり前のことです。
 そう考えると、自社の経営戦略、ビジネス目標から、どのような人材がどのくらい必要になるかを考えないとTo-Beを定義したことになりません。ITSSキャリアフレームワークはあくまで共通指標であり、自社のモデルが反映されているわけではありません。ITSSキャリアフレームワークのコンサルタント/ITのレベル上げることは、あくまで目安であり、ビジネス目標とは直結しないことを分からない方はいないと思います。
トレーニングプランを作ることが目的?
 筆者の知る限りですが、もうひとつの傾向があります。それは、ITSSに基づいた研修ロードマップ作成を目的とされている企業も多いということです。トレーニングについては、やらないよりやった方がいいに決まっていますが、効果を効率的に出す必要があることは言うまでもありません。
 先と同じ議論になりますが、ITSSキャリアフレームワークに基づいた研修プランを作っても、共通化された指標に基づいているだけで、自社の経営戦略やビジネス目標が反映されていません。さらに言うと、ビジネス目標を達成するために必要な人材が持つスキルを習得させる一環としてのトレーニング、という位置づけになりにくいということです。
活用目的を明らかにして共有する!
 明らかに手段が目的になっていて、本来の人材育成に対する考えが欠落しているように思えます。そこには企業のビジョンや経営目標は見えませんし、推進者の奥の深さや使命感、責任感、熱い思いは感じません。
 これらがひとつでも欠ければ、敏感に社員の皆さんは感じ取り、賛同しないばかりか企業側からの押し付けだと受け取り、何の協力もしないことになります。
 先の記事のように、ユーザー企業は自社に必要な人材モデルを明らかにすることから入る企業が増えてきています。そのためにUISSという強い味方を得たわけです。
 経営者にとっていかに人材育成に取り組むかは、今最も重要な課題として捉えられるべきであり、ユーザー企業だけでなくITサービス企業こそ再認識が必要だと思いませんか?
▲▽ 関連サイト ▲▽
第83話:「ITSS V2」、「UISS」についての理解〜その1「ITSS V2
第90話:人材育成、ITSS/UISS活用、人材評価、人事制度の関係 
第91話:人材育成、ITSS/UISS活用、人材評価、人事制度の関係 
第92話:人材育成、ITSS/UISS活用、人材評価、人事制度の関係 
登録:2011-01-30 15:53:00
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