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コラム
第93話:UISSについての正しい理解
 先行して発表されたITSSは、ITサービス企業の考え方を元に作成されています。多くのユーザ企業は、その内容を反映してか終始傍観者でした。ところが最近、システムの構築・運用のみならず、企画から一括してIT企業にアウトソーシングするケースが多くなり、ユーザ企業側にも「このままではIT戦略を実現できる人材が育たなくなる」という危機感が芽生えてきました。市場での競争を強いられている企業にとっては、ITを駆使した戦略策定は必須です。
UISS登場の背景
 多くのユーザ企業では、「経営層」、「IT部門」、「IT活用部門」それぞれの立場として、ITに関わる役割が明確になっていない場合が多いと言えます。また、IT部門自体もビジネス環境の変化や情報技術の進展に、継続的に対応できるための「機能」が体系立って整理されていない状況です。それに関らずコスト削減・効率化を目的に、IT部門の機能の多くを、情報子会社を含むアウトソーサに切り出す傾向が強くなっています。そのため、システムの発注者、活用者としての意識が薄れ、本来自らが担うべく役割すらITベンダなど外部に依存する様になりました。その結果、「戦略的なIT」を企画立案・活用するスキルが空洞化してしまっています。
 競争がますます激化、グローバル化していく中で、それらを見直しIT部門のあるべき姿を定義し、自社内のIT人材のスキルを高める必要が生じてきました。UISSは、こうしたユーザの声を背景に生まれたものです。
ITSSとの違い
 ITSSはシステム開発プロジェクトを中心に策定されています。しかしながら、ユーザ企業のIT部門は、システム構築の重要性もさることながら、構築されたシステムをビジネス部門や顧客にサービスする時点が本当のスタートです。さらに企業自体のメインビジネスを支えるという観点から経営戦略の取り込みも重要な課題です。UISSはこれらの視点により広い範囲で策定されています。
 また、UISSは活用側の観点が色濃く出ており、その結果がキャリアフレームワークの独自性の考え方や、機能役割定義の提供などに現れています。これは、作り手の違いから来ており、ITSSは経済産業省から引き継いだIPA(情報処理推進機構)が維持・管理しているのに対し、UISS策定の中心的な役割を担っているのはJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)です。つまり作り手自身が導入する側であり、自らが活用することを前提にしているという特徴があります。
 さらに、ITSSとUISSは「単一のIT業界」か「複数の業界に属するユーザ企業」か、という対象エリアの違いが明確です。多くのITサービス企業が他社と比較することをITSS導入目的とすることが特徴であることに対し、UISS導入はIT戦略実現のための人材育成にフォーカスされています。IT部門同士を比較する必要は無く、自社のメインビジネスをITで支えるということが大きなミッションであるからです。
 その基本方針で、UISSは自社に合わせて組み立てるための「素材」と「導入方法」を提供する形になっています。具体的には、ユーザ企業の中でIT戦略実現を円滑に進めるための「タスク(機能)」と「スキルセット」を定義し、それらを「人材像(役割)」ごとに組み立てる手順を示しています。これがITSSとUISSの大きな基本的理念の違いです。
企業がUISSを取り入れることのメリット
 先に述べたように、UISSではユーザ企業のIT部門として必要な機能を網羅的に定義してあり、そこからUISSを活用する各企業の戦略やビジネスモデルを基に、必要なものを選択してくるという方式になっています。選択した機能に必要なスキル定義がサブセットとして提供されているので、機能を選択するだけでスキルセットの基本形ができるという考え方です。活用側に軸足を置いた効果的な考え方で、企業戦略から入るという理想的なトップダウンでの策定手法と言えます。
 この方法で進めると、どこのものでもない自社の目的にあった活用環境が構築できます。一から考えて作り出すことは大変困難ですが、UISSとして提供されているものをうまく使いこなせば、効率的・効果的にUISS導入が果たせるわけです。
具体的に活用できるのは、次のような観点です。

・組織力強化のための利用
 組織の持つべき機能
・役割の可視化、および組織設計
 インソース、アウトソースの役割分担の明確化
 業務機能を把握し、生産性や業務品質の向上に向けた人材育成の検討に活用
・企業戦略実現に向けた効果的な投資の実施
 優先順位の明確化、投資効果の把握
 システム発注時のRFP策定やITベンダからの提案の評価での利用
・プロジェクトアサインの効率化
・自社目標と現状にあった育成計画の立案
 メンバの現状スキルの把握、強化すべきポイントの把握
・キャリアパスの明確化
 目標とするキャリアを実現するために、どのようなスキル開発が必要になるかの明確化、およびキャリアチェンジ を図る際の参照モデルとして利用
今後のUISSに関する動き
 ITSSで提供されているスキルディクショナリとUISSの連携が進んでいます。ITSS V2で新たに登場したスキルディクショナリは、知識項目・スキル項目の集合体になっており、UISSとは重複するスキルも多く、共通化することによってさらに構造化を進めることができます。そうなれば、比較的簡単に企業目標や個人のスキルアップ目標の可視化ができ、活用しやすくなってきますが、UISSやITSSなどのスキル標準はあくまで道具であり、頭を使って考えるのは企業、個人であることを最後に付け加えたいと思います。
登録:2011-01-30 15:52:37
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