私は、1年ほど前に「ITスキル標準」普及のためのNPO法人「ITSSユーザー協会」の立ち上げに尽力しました。理由は、自分の25年に及ぶ技術者としての経歴の中で、常に自問自答してきた「将来どうなりたいか。そのため今何をすればいいか。」ということに対して決着をつけたかったからです。
これまで私はコンサルタント、教育ビジネスやサポートビジネスの責任者、技術者のマネジメントを経験してきました。また、人事や人材開発部門の人間ではありませんでしたが、ビジネスの現場ではいつも人材育成についてどう考えどう実践するかが、大きな課題でした。しかし、何をどうすればいいか分からなかったというのが現実でした。 例えば来期の売上目標を立てる時に、経済環境など色々と理由はつけますが、結果的に今期の5%増という具合にしてしまいます。その目標を達成するだけのスキルを持った技術者がいるかどうかとは全く異なる次元の話しです。そして人件費からヘッドカウントを出され、それに縛られ苦しみながら次の期をオペレーションする、という具合です。
本来なら現状の人員のスキルレベルを把握し、育成のために投資してここまで引き上げるから、この目標にチャレンジしようという風に持って行きたいはずです。ITサービスのエリアにおいて「人材が全て」と言われる経営者の方は多いですが、本当にスキルベースで自らの企業の強み弱みを捉えて、人材育成に投資されているか、また将来の経営戦略を立てられているかは、非常に分かり辛い部分です。
技術者個人からしても、自分のバリューをはっきり自覚する手立てが無く、会社での仕事を自分の将来のためにうまく位置づけられないという感覚になりがちです。 そのような状況が続いた中で、「ITスキル標準」が策定されたということは、企業にとってだけではなく、技術者個人にも大変大きなことであり歓迎されるべき内容です。
私自身は、「ITスキル標準」によって自分の中でモヤモヤしていたことが全てクリアになりました。自分の経験や能力が「ITスキル標準」の普及のため、もっと分かりやすく言えば日本の技術者のために役に立つことが、はっきり分かりました。 |