54話で名古屋地域でのITSS V2に対する本格的な取組みが始まるとお伝えしました。7月から始まり9月末で完了します。後半に差し掛かり大詰めを迎えたその内容を臨場感たっぷりにお伝えします。
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地域でのITSS V2展開の状況 |
最近どこへ行っても必ずお聞きすることにしているのは、「ITSS V2の概説書を読みましたか?」です。ところが、9割近くの方は読んでいないという状況です。それは、講演でお聞きしても個別にお話しても同じです。ITSS V2を待っていたのではなかったか?盛り上がっているはずでは?と自問自答してしまう内容です。このサイトへのアクセスも多いですし、講演会でも多くの人が集まります。皆さん何とかV2をものにしたいというような発言をされます。ところが勉強していない人も多いという実態に愕然とします。 以前のコラムで、ITSSの委員会で東海大学の桜井教授が、委員長をされていたことをお伝えしました。BSCの権威でもある桜井先生が、委員会の中で分かりやすい話をされていました。
「ABC分析は、とにかく手順通りに従ってやっていけばそれなりの結果が出ますが、BSCは企業戦略がないといいものにはならないし、手順どおりではなく頭を使わないとまとまりません。ITSSは間違いなく後者のタイプですね。」
ITSSの地域での展開は大変重要だと考えていて、ITSSが地域に展開されない限り普及したとは言えないと思っています。その考えで、3年以上前から地域から声がかかれば、何を差し置いても二つ返事で出かけていくことにしています。名古屋は地域の中でも数多く声をかけていただいていて、今回の本格展開は筆者にとってまた一つ報われつつある大きな出来事です。 新潟でも専門学校での適用が始まりました。新潟は文科省の案件ですが、今までのようにITSSに合わせてトレーニングをつくり、実証してレポートするというようなその場限りに近いものではなく、実際に専門学校の中でITSSを学生の教育に使っていく、さらに企業とのインターフェースに使うという画期的なものです。 この内容も、専門学校でITSSをどう活用するかの指標として、近い内にお伝えできると思います。 |
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名古屋での取り組み |
愛知県情産協(AIA)と名古屋ソフトウェアセンターが中心になって進めている本格的なITSS V2の企業導入についてお話します。その概略は以下のようになっています。
・5社の地場企業に7月から3ヶ月でITSS導入を実践し、名古屋地域で共通的に使えるテンプレートを作成する。 ・対象はITSS V2を導入することを決めた企業であり、勉強会のレベルではない。 ・1社をモデル企業として取り上げ、それをたたき台として各企業のものを作り上げるという流れで作業を進める。 ・出来上がった内容は企業ごとに継続して使えるものとする。 ・成果物を「ITSS-Template for Nagoya」とし、名古屋地区で使えるものとして提供する。 ・「ITSS-Template for Nagoya」は、導入するための提供物(コンテンツ)と具体的導入手順とする。 ・スキル管理システムとして、ITSSユーザー協会のSSI-ITSSを使用する。
実施スケジュールは、図のように計6回のセッションとなっていいます。セッション数の少なさもさることながら、足掛け3ヶ月実質2ヶ月という期間からも、人材像構築などかなり参加者の方には負荷がかかることになります。 |
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具体的な進め方 |
導入手順についてや要求モデル(Objective Tree)、機能モデル(Function Tree)など成果物については、以前のコラムの中で詳しく説明していますので、そちらを見ていただくとして、今回作成していくものと工程については、図のようになっています。 「地域の企業に戦略はあるか」の答えは出ています。 現場をご存じない心無い方の発言や、責任感や使命感の無い経営層の方が言うような悲観的な状況は、ここにはありません。自らの企業の目標を明確にし、そのために何をすればいいかを、真剣に考える皆さんが集まっています。数十人の企業から数百人の企業、リーダーの方から経営層の方と、集まられている方々の事情はそれぞれ異なりますが、思いはひとつです。 先入観や自分勝手な思いで語られる方に、見せ付けたい内容になっています。 |
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要求分析での企業戦略についての議論 |
基本的にこちらがたたき台を示して、それぞれの企業の戦略を反映したものを作成いただき、発表していただくというパターンです。 企業の根幹にかかわる内容が出てきますので、サンプルとしてお見せできないのは大変残念ですが、皆さん自社戦略を反映した分かりやすいものが出来上がっています。 当たり前ですが、筆者の通常のコンサルティングは1社向けであり、今回のような集合コンサルのパターンは初めてで、筆者にとってもチャレンジです。 要求分析での大きな成果は、それぞれが分かりやすくうまくまとまったことと、他社の考えを直接聞けたことです。これは皆さんの意見が一致していました。 自社の理念やビジョン、また事業プランは、エンジニアにとって分かりにくく、そうであるが故に縁遠い存在であったというのが実態ですが、それをエンジニアが一番分かるロジックツリーにまとめることができたのです。作成するプロセスにも大きな意味がありました。会社幹部の皆さんとそれを元に議論できたというのです。 さらに歴史やビジネスドメイン、規模も異なる別会社の考えを直接聞けて、大変有意義なものになったということは、言うまでもありません。
(図は今回とは別のサンプルです)
次回も引き続き名古屋のプロジェクトについてお伝えする予定です。 |
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▲▽ 関連サイト ▲▽
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・ 9月20日出版「ITSS V2の分かる本」
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登録:2011-01-30 15:48:49
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