スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
ITスキルスタンダード研究所
スキルスタンダード研究所についてニュースサービスドキュメントコラムお問い合わせ
コラム
第43話:「ITスキル標準」活用への対応 〜その2
 第42話では、「ITスキル標準」は、何故理解しにくいか、何故活用しにくいかについて、あらためてその理由を並べてみました。読者の皆さんも「その通りだ」と感じられた部分もあったかと思います。今回は、その分かりにくさからくる弊害を明らかにして、その解決策を探ってみます。
活用側から見た分かりにくさ 
 第42話で述べたものを再認識するため、もう一度並べてみます。

@定義されている職種専門分野と、実際に仕事をしている職種の範囲や定義が異なる。
Aカスタマイズしていいと言っていたが、何をどうすればいいのか不明。
B「スキル熟達度」、「達成度」が分かりにくい。スキル定義自体も両者で重複している。
Cスキル定義(スキル領域)を印刷すると800ページにもなる。中身も重複感が大きく、意味も分かりにくい。多すぎて見る気がしない。
D何をどう使えばいいか、それによって得られるメリットが見え難い。また、経営戦略から入らなければいけない、という話をよく聞くが、意味が分からない。

 これらをどうで考えればいいかは、第42話で説明していますので、是非ご覧下さい。
分かりにくさの弊害
 一つ言えることは、情報があまりにも少ない中、これらの疑問や課題を自社内だけで解決するのは、到底無理な話だということです。多くが理解不足、独自解釈となり、うまく導入できていないケースにつながっていく危険性が大です。このように自社だけで何とかしようという風潮は、人材育成のための投資をあまり考えてこなかったIT業界の象徴的な内容です。その結果、分からずにとりあえず単にスキル診断をして、ツールベンダや教育ベンダの言いなりに進めてしまうのは、まだましな方かもしれません。この場合、どうあるべきかを何も考えていないので、当然のこととして次のステップがありませんが、お金や時間などを捨ててしまうというマイナスにとどまります。(少ない人材投資のための費用なので、大変痛いことには違いありませんが) どうしようもないのは、人事等級制度に、そのままの形で取り入れてしまうことです。スキルフレームワークが人事等級制度の枠組みに似ているから誤解されるのでしょうが、自社のビジネスモデルと何の関係も無いスキルフレームワークを、そのまま採用して何を評価しようというのでしょうか。
分かりにくいながらもうまく捉えるには
 人材調達や、自社の実力がどの程度かという企業価値を比較する、もしくはエンジニア個人がITエリアでのバリューを確認しキャリアデザインを考えるなど、標準のスキルフレームワークを利用するべきものはたくさんあります。しかし、こと企業自身のビジネスに関わるものは、その企業独自の尺度で見て行く必要があります。自社ビジネス目標を達成するための職種や必要なスキルは、標準や他社とは異なります。何度も書いていますが、「ITスキル標準」は辞書であって人材像ではありません。必要なスキルを網羅して定義してあるものです。企業で必要なのは人材像であって、その人材像を構成するスキル定義です。辞書をそのまま取り入れてスーパーマンのようなありえない人材を求めるのは、得策ではありません。自社のビジネス目標達成のための人材像を定義し、それを目標として現状とのギャップから育成プランや採用プランを考える、というのが正しいアプローチです。これが、「目標人材モデル」の考え方です。
ビジネス目標にフォーカスした導入
 大変失礼な話ですが、人事の方がITエンジニアのスキル定義を策定やレビューができるでしょうか。さらに言えば、「ITスキル標準」を正しく理解して導入することが可能でしょうか。私の知る限り、制度化を目的として導入されているとしか思えません。しかもうまくいっていなくとも、企業として失敗したとは言えないことになります。よく、経営判断で導入を決断した、という話も聞きますが、経営層の方は導入するのを決めただけで、後は担当者に責任を押し付けているように見えます。自らは理解せず、リーダーシップも取らず、これで本当に経営判断で導入を決めたと言えるでしょうか。これら一連の事象は、ITエンジニアの育成に活用して行くという本来の趣旨からすると、やはり的外れだと言わざるを得ません。また、ITスキルの話ですから導入には現場のエンジニアの参画が不可欠です。しかも適切な導入手法に乗っ取っていないと、いくら人を集めてもうまくレビューできません。
IPA発行「経営者向け概説書」の活用
 現状では、「ITスキル標準」リリースから3年経ってこの程度の普及しかできていない、と言うしかない状況です。では、どうすれば前に進めることができるか、ということの一つの答えが「経営者向け概説書」です。私もかなり執筆には関わっていて、今までのコンサルティング実績を元にした導入手法や考え方を披露しています。また実際にコンサルティングサービスの提供先であるファイザー社、サイバード社、テンプスタッフ・テクノロジー社ほか多くの導入企業が、活用事例として詳しく紹介されています。
 経営者の方だけでなく、導入に関わる全ての方にお読みいただきたい内容です。皆さんが今まで困っていたことの答えが、必ず見つかります。

 次回第44話:「ITスキル標準」活用への対応 〜その3 
   視点を変えて「ITスキル標準」提供側として何を今後そろえていけばよいか、ということにフォーカスします。
登録:2011-01-30 15:41:56
 サイトの利用について | プライバシーポリシー | 情報資産管理方針 |
トップページへ戻る