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コラム
第205話:年末コラム 〜CCSFのこの1年 
 CCSFが3月にIPAから公表され、その後普及活動を進めて年末を迎えようとしています。
スキル標準の最終形であるCCSFの生まれる経緯や、公表後の反響、また今後の考え方などをまとめてみます。

CCSFの考え方
 コンセプトや構造については先のコラムを見ていただきたいのですが、CCSFの基本的な考え方は「企業へのスキル標準導入」です。
 ITSSが登場した時に注目したのは企業の経営者や人材担当にもかかわらず、提供側からは個人の話と企業の話が混ざったメッセージが多く、混乱や誤解を招きました。
 この矛盾について追及し、企業に導入するには次のことを守る必要があるという結論に達しました。

・人材像やスキルから定義するべきではない
 ITSSは職種やスキル熟達度定義、達成度指標定義が細かく設定されているため、そのままの形で使うことが当初のイメージとして定着してしまいましたが、それでは企業の意志やビジネスモデルが反映されず、自身の考え方や事業計画とは全くかい離し、説明しにくい人材育成の仕組みを持ち込むことになってしまいます。

・企業力や組織力を向上させることが目的であり、そのために必要な「タスク」を明らかにする
 企業導入の目的は、企業力、組織力を向上させる人材を維持・確保・育成することであり、なぜならビジネス目標を達成する必要が あるからです。そこに直結する考え方を形にするには、企業を対象としたスタートにする必要があり、それがタスクであるということになります。
 この考え方を実証したのが、2003年のファイザーへのITSS導入です。当時定説となっていた「どの職種に何人いるか」というところからスタートすることに疑問があり、企業導入の方法論を検討し仮説を立て、ファイザーで実証させていただきました。
 考え方は「ファンクションから入る」というもので、現在のタスクと同様の考え方です。ITSSのスキル熟達度を分解し、SLCPに沿って再構成するという方法をとりました。CCSFをご存知の方はお分かりのように、これがCCSFの基本思想になっています。
  また、達成度指標でレベルが決まる、という局所的な話ばかりが先行していました。スキル熟達度と達成度指標が同じ表現をされていたり未成熟だったこともあり、殆どの人が両方ともスキル定義だと誤解していました。達成度指標は成果を評価する指標であり、企業の人事制度に抵触する場合が多いという話など大局的、現実的に語れる人は誰もいませんでした。
CCSF公表後の反響
 3月の東京での有償セミナーは満杯で2回目を追加するに至りました。
その後、IPAと共催で全国を回りましたが、どこも反響が大きく、これをきっかけに検討を進めたいといわれる企業も増えてきました。
 3つのスキル標準があり、構造も考え方も異なり、どうしていいかわからず勉強ばかり繰り返している、そのうちそのサイクルも長くなり、担当者も異動で新たな担当になるか、棚上げになる、そういった状況が続いてきました。
 国側も地域や中小に対してはあまり手を打てておらず、年に1度か2度現地でセミナーを開催する程度では、焼け石に水、だったかもしれません。

 先を考え、人材について強いコンサーンを持っている企業にとっては、CCSFは使い物になります。いつまでも、難しい、分かりにくいなどと躊躇している企業は置いて行かれます。
 IT業界ほど人材育成について必要性が高いにも関わらず、真剣に取り組んでこなかった業界はないと思います。この数年前までの十数年かは、人を集めれば仕事になった状態が続いてきました。だからまるで派遣業を生業とするような小さな企業が乱立してしまったとも言えます。また、振り返るとこの時代は、IT化することがイノベーションだったと言え、誤解を恐れずに言えば、その間、企業は本人任せで人を育成することを放棄してきたと考えるのは私だけではないはずです。
 しかし、現在はIT化することは当たり前であり、イノベーションでも何でもありません。こうなれば人材を育成する経験不足から、術やノウハウがあまりにも貧弱だというのは言いすぎでしょうか。
CCSFの今後
 民主党政権がスタートしたときの仕分けで、スキル標準は民間でということが決まっています。
 今後方針変更になるかどうかは定かではありませんが、スキル標準を導入した人が殆どいない面子で、改善することや維持管理は難しいかもしれません。
 先ほど、IT業界は人材育成をおろそかにしてきたという話をしましたが、大手ベンダなどについては人も組織もコストもかけられ、独自で進めています。しかしながら地域などの中小は先ほどの内容の通りだという認識です。
 IPAの人材白書でも、スキル標準に普及率は大手ではかなりのものですが、中小では全くと言っていいほど普及が進んでいません。
放っておいてもできるところだけ進んでいて、手厚いサポートが必要なところはほとんどだめ。この状況が全てを物語っています。

 スキル標準の最終形まで来たCCSFを活かしていくのは、われわれ活用側かもしれません。ITSSが国側からスタートしたのに対し、UKのSFIAは民間からスタートし、大きなうねりを起こしました。人任せではなく自身で立ち上がる時が来たようです。
登録:2012-12-25 12:49:56
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